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宇宙航空研究開発機構

青山 剛史

1963年生まれ。1987年3月東京大学工学部航空学科卒業。1993年3月東京大学大学院工学系研究科博士課程(航空工学専攻)修了(博士(工学))。 1993年航空宇宙技術研究所(現JAXA)入所。1999年3月より2000年3月米国メリーランド大学客員研究員。2010年8月より2012年8月JAXA研究開発本部研究推進部研究開発企画室長。2012年9月から現職。

――現在までに携わられた研究を教えてください。
 大学院で博士課程に進む際、ヘリコプターに関する研究ではどのようなテーマが一番良いかを考えました。世の中に直接役立つのはきっと騒音だろうと思い、騒音の低減を研究テーマの一つに選びました。博士号も、そのテーマで取得しています。JAXA(当時NAL)に入社した後も、ヘリコプターの騒音低減に関する研究を続けました。
  JAXAが発足した後、航空だけでなく宇宙分野でも音響問題で困っていることがあると知り、ヘリコプターの騒音解析を研究してきた経験が活かせるだろうと考えて研究テーマに加えました。それは、ロケットの打ち上げ時に発生する轟音が、フェアリング内部の人工衛星まで影響を及ぼしてしまうという問題です。海外では、実際に人工衛星が損傷したという話もあります。その後、どんどん研究の幅が広がって、現在では旅客機のCFD(数値流体力学)解析が最大の研究テーマになっています。

――ソニックブームの研究もされていますね。
 ロケットの音響解析を手がけた時に、それまでヘリコプターの騒音解析研究では扱わなかった分野がありました。それが音響透過・振動と非線形音響伝播です。JAXAでは、非線形音響伝播の研究は行われていませんでしたが、アメリカで行われていた解析手法を参考に、解析プログラムを開発しました。このプログラムは、ソニックブームの音響解析に非常に役立ちました。D-SENDプロジェクトで、このプログラムによって立ち上がり時間を考慮した現実的なソニックブームの波形が予測できたり、さらに発展的な手法で大気擾乱の影響を検討できたことで、私たちの研究グループはプロジェクトの成功に大きく貢献することができました。

――これまでに一番印象に残っている研究は何ですか。
 BVI(ブレード/渦干渉)騒音と呼ばれるヘリコプター騒音の研究ですね。BVI騒音とは、ヘリコプターのブレードが生み出す翼端渦が、後続のブレードに衝突、あるいは近接する際に発生するバタバタと聞こえる騒音です。 NASAでも研究されていましたが、私たち(株式会社コミュータ・ヘリコプタ先進技術研究所との共同研究)が世界で初めて鋭い山を持つBVI騒音特有の波形予測に成功しました。当時、私たちが成功した理由としては、スパコンの性能もありますが、CFD技術に優れていたということが挙げられます。日本のCFD技術は、海外に対しても強みになっていると思います。

――ヘリコプター研究の面白さはどこにありますか。
 大学時代に生物の飛行に興味があったのでその分野の権威である教授の研究室に入ったところ、教授はヘリコプターの権威でもあったので「ヘリコプターをやってみなさい」と言われたことがきっかけでした。固定翼機とは違った複雑さがあってこれが面白く、研究テーマとしてもやることがたくさんあります。

――音響解析やCFDなど幅広く研究されていますが、やりがいは何ですか。
 私たちのような基盤領域の研究では、ある特定の機体開発などに向かって進むのではなく、基盤技術を使っていろいろなプロジェクトに貢献しなければなりません。そのため、自分たちの見識で将来必要となる技術を先読みして、そこに布石を打っていきます。ソニックブームでは、現実的な波形の予測技術が必要になるだろうという読みがぴったりと的中して、プロジェクトに貢献できたことに非常に満足しています。必要とされる基盤技術を自分の見識で見通せた、ということは研究者として嬉しいことです。
 CFDに関していえば、高速化にターゲットを絞って研究開発を続けてきた結果、一昔前まで一昼夜かかっていた計算を2分に短縮できました。計算の高速化は実現したので、次は巡航時以外の非定常状態を解析できれば、離陸から着陸まですべての状態をCFDで解くことが可能になります。もちろん、風洞試験や飛行実証の必要性は変わりませんが、CFDによる航空機の設計手法は大きく変わっていくのではないかと考えています。

JAXAのスーパーコンピュータ棟にて。手にしているのは、3Dプリンタで出力した主翼のCFD解析モデル


このインタビューは、JAXA航空部門広報誌「FLIGHT PATH No.9
からの転載です。所属・肩書などは取材当時のものです。
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