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宇宙航空研究開発機構

濵田 𠮷郎

1972年生まれ。1994年3月東京大学工学部計数工学科を卒業。1996年3月には同大学工学系研究科計数工学専攻修士課程を修了し同専攻博士課程に進む。1998年3月に同課程中途退学。同年4月に航空宇宙技術研究所(現JAXA)に入所。2006年3月から2007年3月まで、英国ケンブリッジ大学に客員研究員として留学。2015年4月より現職に就く。

――現在の業務内容について教えてください。
 突風応答軽減制御技術という、乱気流などに遭遇した際に自動的に機体を制御して揺れを抑える技術の研究を行っています(詳しくは6ページ参照)。その中で、全体の取りまとめと制御部分を担当しています。制御アルゴリズムの考え方自体は昔からあるものですが、これまで世界的に見ても航空機の前方にある乱気流を検知する技術がなかったので、私たちの研究がおそらく世界で初めての技術になるでしょう。ただし、昔からあるアイディアとはいえ、実用化には課題がたくさんあります。例えば、本当に揺れを抑える制御が行えるのか、あるいは検知が間違っていた場合はどうなるのかなど、解決しなければならない課題については悩んでいるところです。

――これまでにどのような業務に携わってきたのでしょうか。
 航空宇宙技術研究所(NAL)に入所した当初は、「かぐや(SELENE)」に関連した研究を行いました。その頃は「かぐや」の初期検討段階で、当時の宇宙科学研究所(ISAS)と宇宙開発事業団(NASDA)、NALの共同研究でした。NALの担当は着陸機の部分で、私は着陸までのアルゴリズムの検討に携わらせてもらいました。結局、「かぐや」の着陸機構想は無くなってしまいましたが、同時期に高速飛行実証フェーズⅠにも参加しました。3機関が統合されてJAXAが誕生した後、「きく8号(ETS-VIII)」の後期利用実験として姿勢制御実験を行っているチームに参加させてもらいました。その後は、小規模飛行実験機(SSRV:SmallScaleResearchVehicle)という小型の無人機の実験も行いました。振り返ってみれば、さまざまな研究に参加してきましたが、基本的にはずっと制御理論を研究しているといえます。

――大学で制御を専攻したきっかけ、そしてNALに入所したきっかけは何ですか?
 制御は宇宙や航空もそうですが、自動車でも化学プラントでも使われています。制御理論を学んでおけば、たいていの業種には行けるのではないか、ということが大学で制御を専攻した動機ですね。大学の同期もさまざまな業種に就いていますから、あながち間違いではなかったと思っています。私が大学院生の頃学会に行くと、NALに在籍する制御の研究者が何名かいらして、制御の実験などをしているということを知りました。制御理論を活用する場として航空宇宙分野は面白そうだと興味を持ったことが入所のきっかけですね。

――これまでにもっとも印象深かった研究や実験は何ですか?
 これまでに小さい無人航空機の制御から、静止軌道上にある4t級通信衛星の制御、そして今回の対象である旅客機の制御と、いろいろやらせてもらえた研究者は珍しいと思います。中でも、大きなものを制御させてもらえた「きく8号」の制御実験は、印象深く記憶しています。実験以外では、高速飛行実証フェーズⅠでクリスマス島に行ったことが今となっては面白い経験だったと思っています。

――今の研究のやりがいは何ですか?
 大きな目標があってその中で自分の役割がはっきりしていて、かつ自分の持っているスキルがマッチしていると感じており、とても楽しくてストレスなく研究に取り組めています。たぶん、どれか一つが欠けていても、辛くなってしまうという気はします。これまでさまざまな研究に携わって、残っている分野は現在研究している旅客機の制御くらいなので、今回の仕事はなんとかまとめあげたいと思っています。しかし、人が操縦する、乗客が乗っている機体の制御となると、人命に直結していますから責任は重大です。万が一にも事故があってもいけませんから、スパンの長い研究になるでしょうし、たぶん定年までかかってしまうかもしれません。将来、飛行機に乗って突風応答軽減制御で機体の揺れが抑えられた時、「自分がやったんだな」と感じられればいいかなと思っています。


このインタビューは、JAXA航空部門広報誌「FLIGHT PATH No.13
からの転載です。所属・肩書などは取材当時のものです。
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