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宇宙航空研究開発機構

津田 宏果

電気通信大学大学院情報システム学研究科修了。2004年宇宙航空研究開発機構入社。航空機におけるヒューマンエラー防止技術。パイロット状況認識支援技術の研究。飛行シミュレータ及び実験用航空機を用いた試験・実験に従事。

――現在の業務内容について教えてください。
 FQUROHプロジェクトでは、実験用航空機「飛翔」によるフライトに関する業務でプロジェクトを支援しています。特に、パイロットが地上に設置したマイクロホンの真上を正確に飛べるように誘導するトンネルインザスカイを担当しており、飛行する機体にも搭乗してパイロットへの指示や機上と地上との通信も行います。実際のフライトの前には、シミュレーターを使ったパイロットの慣熟訓練も行いました。

――本来の研究テーマはどのような分野でしょうか。
 航空ヒューマンファクターです。大きく二つあって、一つはCRMの研究、もう一つはパイロットインターフェースの研究です。CRMとはCrewResourceManagementのことで、航空機が危険な状況に陥りそうな時、2名のパイロットがそれぞれ持っている知識や能力を出し合って安全な状況に戻すことです。パイロット同士が仲良くなることではなく、初めて組んだ相手に対してでも、間違った判断には躊躇せず「危ない」と言えることです。そのCRMを実践するスキルは、どのように訓練すれば身に付くのか、身に付いたかどうかはどう計測すれば良いか、関係機関のご協力をいただきつつ研究を進めています。
 パイロットインターフェースは、パイロットの状況認識や操縦を支援するディスプレイ表示のことで、FQUROHで用いているトンネルインザスカイもその一例です。私の研究では、赤外線カメラなどで撮影した映像をパイロットに提供することで、夜間など視界が悪い場合でも昼間と同等の状況認識ができるようにすることを目指しています。 CRMもパイロットインターフェースも入り口は違いますが、どちらも航空機の運航安全に繋がるものと考えています。

――ヒューマンファクターを研究しようと思ったきっかけは何ですか。
 きっかけは、単純に面白そうと思ったことですね。学生時代はロボットの制御を研究しており、宇宙空間でのロボット活用に興味を持っていました。就職活動の際に当時の航空宇宙技術研究所(NAL)を見学した折に、航空ヒューマンファクターの研究に出会いました。その際に対応してくれた研究員が今の上司です。

――これまで携わった中で、特に印象深かった出来事は何でしょうか。
 飛行機やヘリコプターに、これほど多く乗ることになるとは想像していませんでした。フライトは全てが印象に残っていて、それぞれに思い出があります。FQUROHプロジェクトでは、トンネルインザスカイを工夫したことでマイクロホンの上を精度よく飛ぶことができた時は嬉しかったです。MRJのコックピットなどに関する共同研究に参加したことも、印象に残っています。“安全”を証明することの難しさを学んだ経験でした。
DREAMSプロジェクトの一環で、2006年にアラスカでの飛行試験も印象に残っており、意識が変わるきっかけでもありました。アラスカでは、厳しい自然環境の中、自動車代わりに小型機が用いられていて、ひっきりなしに飛びかっています。そんな状況では、乗客も窓外監視をしたりフライトをパイロットに強引に要求しないといったことが実践されています。日本では、乗客はお客様として大事にされがちですが、本来は乗客にも安全のための責任があるということを教えられました。FQUROHでも自分の試験でも限られたスケジュールの中、データを得るためには少しくらい無理をしてでも飛びたいと思うこともありますが、アラスカで学んだ教訓を思い出すようにしています。

――仕事のやりがいはどのようなところに感じますか。
 飛行機やヘリコプターの運航現場に直結した課題に取り組めることはやりがいが大きいですね。その分、責任も大きいと感じています。将来的に自分のヒューマンファクターにおける研究成果が航空機の安全性向上に役立つことができれば嬉しいです。

フライトシミュレーターの前で


このインタビューは、JAXA航空部門広報誌「FLIGHT PATH No.14
からの転載です。所属・肩書などは取材当時のものです。
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