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宇宙航空研究開発機構

 

わくわくプロジェクト

保江かな子(写真左)
数値解析技術研究ユニット/次世代航空イノベーションハブ研究開発員

岡本太陽(写真右)
事業推進部 主任


航空分野の新しい研究領域を創出するため、「わくわくプロジェクト」が立ち上がったきっかけや活動などについて聞きました。

―― わくわくプロジェクトを立ち上げたきっかけは何ですか。

保江 「わくわくプロジェクト」は、JAXA航空技術部門の新しい研究領域を、デザイン思考という手法を使って創出することを目指して、事業推進部の有志※1で始めた活動です。デザイン思考とは「人」を起点として潜在的なニーズを掘り起こし、新しい方向性やプロダクトなどを見いだしていく手法です。航空技術部門には新しい価値創出を目指し、新分野を創造していくために、トップダウンでいくつかの研究ターゲット設定し、そのターゲットに関連する研究開発を促進する「新分野開拓研究制度」が2017年度から始まりました。しかし、設定される研究ターゲットは、どうしてもこれまでの技術の延長線上や世の中の潮流に沿ったものになりがちだと感じました。そこで、世の中の新たな潮流を生み出すようなアプローチもあっていいのではないかと思い、従来の学問分野や航空機メーカー、エアラインからのニーズなどを超え、直接、「人(生活者)」を起点にして考えてみようというのが、このプロジェクトを始めたきっかけです。
岡本 「わくわく」は“Work creatively, Work cool!”の略ですが、「おぉっ!と言われることや、もっとわくわくすることをしたい」という話を当時の上司である立花さん(立花繁 事業推進部計画マネージャ)や保江さんとしたことから、3人でこのプロジェクトをスタートしました。

―― どういう方がプロジェクトのメンバーになっていますか

岡本 3人だけではアイデアを広げるのは難しいので、思いを共有する事業推進部にいる同年代の仲間を巻き込み7~8人のメンバーになりました。取り組みを進めると、事業推進部のメンバーだけでも閉じこもった発想しか出てこない状況があり、航空技術部門内の研究の現場に近い人やJAXAの異なる部門で同じような問題意識や取り組みを持つ人にも声をかけ、現在は20人ぐらいのコミュニティーになっています。
保江 研究者だけでなく事務系職員も一緒に活動しているという点も特徴だと思います。

―― どのような活動をしてきたのですか。

保江 活動は大きく三つあります。一つは、新しい研究領域を創出する活動そのものです。私たちだけでは、航空や宇宙の「当たり前」を取り払った新しい発想がなかなか出てきません。デザイン思考の生みの親である外部のコンサルタントや既にデザイン思考を積極的に活用している団体や企業と連携できたことがとても重要でした。二つ目は事例研究と呼んでいますが、航空宇宙分野以外も含めてデザイン思考がどのように使われているかという調査です。シリコンバレーでデザイン思考を活用する現場も訪ねて議論しました。もう一つはデザイン思考自体の考え方をJAXA内に普及していく活動です。
岡本 デザイン思考では、さまざまなフェーズで新しいアイデアをブレーンストーミングで積み上げていきます。私にとって難しかったのは、アイデアを積み上げていくと、考えがどんどん膨らんで収拾がつかなくなることです。プロジェクトの活動としてそれをどうまとめ、調整するかが個人的には大きな課題となりました。着地点を見越して、そこまでロジックで考え詰めていく仕事ばかりしていたこともあってか、なかなかこうした思考に慣れず悪戦苦闘の連続でしたが、とても良い経験になりました。

―― 活動の成果を教えてください。

保江 このわくわく活動は、2018年12月で一区切りになります。活動のアウトプットとして、将来社会で「空」を活用するシナリオを描いた「4つのストーリー」をまとめ、JAXA航空技術部門ホームページに公開(Future Blue Sky)したところです。
岡本 「4つのストーリー」は、技術的な根拠よりも、空を利用する「人」がどう感じるかに重きを置き、平易な言葉を使ってストーリーを表現しています。これからいろいろなフィードバックをもらい、今回の成果を社内の新分野開拓制度に反映してもらえるようトライしたいと思っています。
保江 今後は、「人」が本当に望む将来の姿を見据えた研究開発テーマを創出し、それを実現するための研究開発を進めていきたいです。

―― JAXA航空技術部門を目指す人たちにメッセージをお願いします。

保江 私が航空を目指したきっかけは、映画『スター・ウォーズ』に登場するある宇宙船の機体がとても美しく、将来そういうものを作りたいという気持ちがあったからです。JAXAには新しいことに挑戦したいという気持ちを受け入れてくれる態勢があります。問題意識を持ってやりたいことを話すと応援してくれる人が多い職場だと感じています。
岡本 航空分野にはマーケットがしっかりあり、JAXAには日本の産業界に貢献する研究開発を行うという大きな役割があります。自分が学んできたことをどう活かしていくがイメージしやすい環境だと思います。JAXA職員として留学したアメリカでは航空や宇宙分野のベンチャーが盛んで、とても勉強になりました。航空もこれからイノベーションや新しいサービスがどんどん生まれてきます。JAXA発の航空ベンチャーも出てくるのではないでしょうか。それをお手伝いする仕事もしたいですね。自分の経験を通して、JAXAは研究者、事務職の両者にとっていろいろなことにチャレンジできる職場だと実感しています。

 


このインタビューは、JAXA航空部門広報誌「FLIGHT PATH No.22
からの転載です。所属・肩書などは取材当時のものです。
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