橋本 和樹

次世代航空イノベーションハブ 研究開発員
1991年生まれ。2014年3月東京大学理学部化学科卒業。2016年3月東京 大学大学院理学系研究科修士課程修了。2016年宇宙航空研究開発機構 入社。大学では光学、特にコヒーレント・ラマン分光法に関する研究に従事。 入社後、雪氷滑走路技術に関する研究に従事。
2016年4月入社


――現在の研究内容について教えてください。
私が所属している次世代航空イノベーションハブでは、雪や氷、雷といった航空機に影響を及ぼす特殊な気象に対応する気象影響防御技術の研究を行っています。私は気象影響防御技術の中でも、安全に離着陸できるかどうかを素早く判断するために、滑走路上の雪や氷の状態を計測する雪氷モニタリングセンサーの光学センサーの研究をしています。

――JAXAに入社したきっかけは何ですか。
大学ではずっと光学を専攻していましたが、光学関係のメーカーで製品をつくりだすよりも、光学そのものとは別の分野で世の中に貢献できるような研究をする方が自分に合っていると考えていました。そこで、私がやっていた光の研究が、それまで全く関係がなかった航空や宇宙の分野で役立てば良いと思いJAXAを希望しました。
宇宙分野では光技術が使われていると知っていましたが、航空技術部門に配属が決まった時点では、航空分野でどのように光の技術が使われているのか思い付きませんでした。配属後、ドップラーライダーや燃焼の研究で使われる分光計測技術など、光の技術が想像していたよりもたくさん使われていて、とても面白く感じています。雪氷モニタリングセンサーも、積雪の状態を把握するためにレーザー光を使っているので、大学で学んだ知識が活かせていると思います。

――雪氷モニタリングセンサーの研究におけるやりがいは何ですか。
雪氷モニタリングセンサーの研究では、さまざまな分野の知識が必要になります。例えば、計測対象となる雪の特性を知らなければならない。そのためには、雪の専門家に話を聞かなくてはなりません。また計測したデータは機械学習(※)にかけていますが、その際に機械学習やソフトウェア工学、情報工学といった異分野の知識も必要になります。大学で行った光の研究では、自分一人だけでも実験装置を作るところから計測するまでの作業ができてしまうのですが、現在は、いろいろな研究者や大学、研究機関と協力して進めています。関わる人が増えるので調整は大変になりますが、それぞれの分野ごとに考え方も違えば習慣も違うので、非常に面白いですね。

――今後、どのような研究をしてみたいですか。
現在は雪氷モニタリングセンサーの研究で手いっぱいですが、光学の知識を活かして航空分野の新しい技術開拓につなげられるような研究についても考えたいと思っています。
また航空分野以外の異分野を研究されている方々と、横のつながり、人脈を広げることができたら良いなと思っています。その点では、現在所属している次世代航空イノベーションハブは最適な場所ですね。

――これからJAXAを目指す方々にメッセージをください。
これは私の個人的な印象ですが、JAXA内でも航空技術部門の方々は「研究者」という感じが強いですね。私は研究が好きなので、研究者に囲まれたこの環境が好きです。そして、私もそうですが、航空や宇宙ではない分野を専攻していても大丈夫と伝えたいですね。イノベーションハブのような組織ができて、航空宇宙以外の広い分野の研究でも、きっと役に立つと思うので、ぜひポジティブにとらえてチャレンジしてほしいと思います。

  • ※:膨大なデータをコンピューターで分析・分類・判定することで、データの中から規則や法則、判断基準などを見いだすこと。

雪氷モニタリングセンサーの図を説明する橋本研究開発員

このインタビューは、JAXA航空部門広報誌「FLIGHT PATH No.19
からの転載です。所属・肩書などは取材当時のものです。