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宇宙航空研究開発機構

プロの広報力~「サイエンスZEROの取材で学んだこと」

JAXAメールマガジン第200号(2013年6月20日発行)
吉田憲司

皆さん、こんにちは。再登場の吉田憲司です。私はD-SENDプロジェクトマネージャをさせて頂いています。7月下旬からスウェーデンで低ソニックブーム設計概念実証(D-SEND)プロジェクトの飛行試験を行います。先日そのことをNHKの『サイエンスZERO』で取り上げて頂きました。番組の意図は、ソニックブームとは何か?どうしたら低減できるのか? を分かり易く視聴者に伝えることでした。そのため、制作担当者が納得するまで、説明の工夫と素材の作り込みにチームで対応しました。

例えば、ブーム模擬音発生装置でソニックブームを疑似体験いただく際、ソニックブームは風の塊が伝わるのではなく、その場の圧力変動が伝播して行くことを理解頂くために、スピーカーの前の内壁にアルミ箔を張ってみました。こうしますとアルミ箔に映った顔が、ソニックブーム発生時に歪むことで一目瞭然という仕掛けです。私達では思いもよらぬ発想でした。放送では出演者の女優のMさんに装置に入って頂き、顔が歪むことで本人にも視聴者にも驚いてもらおうという趣向でした。Mさんの歪んだ顔を放送して良いか?同行していた所属事務所のマネージャーとの議論があったという撮影時の“裏話”もありました。
次にスタジオ収録にも参加させて頂きました。収録前に3時間も入念に打ち合わせをして、視聴者にとってどうすれば分かり易いかを再確認しました。収録では、私の場合は台本通りでなく、あくまでも自分の言葉で語って欲しいとのことでしたので、学会等での質疑応答の“乗り”でしゃべらさせて頂きました。また私の最大の役目は、Mさんを理科好きの仮想の高校生と思って(実際は現役の大学生)、番組終了までにソニックブームを下げる研究は面白い! と思わせて欲しいというものでした。そのため、熱く、楽しく語って欲しいと言われましたが、果たしてその通りできたか自信はありません。ちなみに、Mさんは撮影前の我々との打ち合わせには参加しませんでしたので、まさにスタジオでのぶっつけ本番でした。

収録はCGのD-SEND#2試験機をスタジオで飛ばしたり、コンコルドや可変後退翼機の卓上模型を見せながら語ったり、台本に無い質問にも即興でお答えしたりして約3時間もかかりましたが、放送では見事にコンパクトに30分番組に編集されているのは、まさにプロの広報力を感じた思いです。とにかく常に自分視点ではなく相手視点で物事を考える!ことで、如何に視聴者に分かり易く伝えるか! を貫いている点は大変勉強になりました。今回の取材から、研究においても自身の能力の範囲内で“もがく”のではなく、学問に真摯に向き合ってその発展のためには多くの人の力を借りてでも前に進めようとすることが最も大切であると感じましたが、如何でしょうか?

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