安全で高性能なエンジンをめざして

JAXAメールマガジン第224号(2014年7月7日発行)
鈴木和雄

JAXAメールマガジン第215号に続きまして、航空エンジンの話をします。

航空エンジンに要求される最優先のことは高い安全性と信頼性です。つまり機体が必要とする推力を必要な時に速やかに出し、絶対に停止しないことです。たとえ停止してもスムースに再起動できることです。
航空エンジンは主な要素として圧縮機、燃焼器、タービンを持ち、それぞれが高い性能を有することがもちろん求められますが、これらを連係させてシステム全体として優れた性能を発揮するためにはエンジン制御技術の役割が大きいのです。この制御技術は、エンジンの起動、停止および加減速などを安全に行うためだけでなく、高効率のための運転、NOxを低減する運転、エンジンの寿命を延ばすための運転、整備を軽減する運転など種々の要求にそった運転も可能にするようになってきています。
例えば、NOx低減のためには、火炎温度を下げNOx生成を抑制できる希薄予混合燃焼を用いますが、問題点として吹き消えや燃焼の不安定が起きやすいです。そこで、安定燃焼が得られやすいがNOxが多少増える拡散燃焼も併用し、それぞれで燃やす燃料の割合をエンジン作動条件に対応して制御することで、広い運転範囲で低NOx性と燃焼の安定性を両立させることができます。
また、効率向上のための制御もあります。タービンローターとケーシングの隙間は一般に狭いほどタービンの空力効率は良くなります。しかし、接触損傷を避けたいですから、一定の間隔を保つ必要があります。ところがタービン動翼は回転による遠心力での伸びと加熱による熱膨張の伸びがあり、作動条件により動翼先端の径方向位置が変化します。ローターを覆っているケーシングもまた熱膨張で径が変化します。その時間的変化も熱容量の差により異なってきます。そこで、常に隙間が一定でしかも狭く保つためにケーシングに冷却空気を吹き付け、その流量を調節して冷却強度を変えることでケーシング径を制御して、タービン効率を向上しています。
このように、作動の安全確保を第一に考えながらも、効率や環境特性などでより優れた性能をエンジンが発揮できるように制御技術は活用されています。