航空の戦後7年間の空白

JAXAメールマガジン第225号(2014年7月22日発行)
中道二郎

幾つかの大学で講義をさせてもらっている。集中講義である。航空工学概論といったところか。最近の航空科学技術、特にJAXA航空本部での研究開発を紹介し、若い世代にさらに大きな飛躍をして欲しいというのが動機で、同時に講義の内容になる。
講義のあと宿題を出すことにしている。レポート形式でテーマは、“我が国の航空産業に期待すること”と決めている。長年航空の分野にいる私にとっても役にたつコメントもあるが、意外な記述もある。学生の3割ほどが「戦後7年間の航空の空白~日本の航空産業の遅れ」と書くのである。これには驚く。

私自身、戦後の云々。といった経験はない。私の恩師らは自らの経験として、しばしば、航空が過ごした戦後の苦難の7年間の話をして下さった。以来、我々の年代で日本の航空が不振、空振りをする度にこの7年間が出てきた。さらに若い世代はこのストーリーを、書物/インターネットからの情報として件のレポートにするのであろう。
確かに紆余曲折はあった。その度に我々の年代が自らの至らなさの弁解に先生から教わった言葉を使い、その伝言をし続けてきてしまったように思う。恥ずかしく思う。
60年前の僅か7年の空白が今までの航空の発展に致命的な影響を与えてきたとは到底思えない。深い反省とともに航空科学技術、我が国の航空産業の更なる発展にこれからも微力を尽くしていきたいと考えている。
MRJの受注機数がまた40機増えたと聞く。