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宇宙航空研究開発機構

飛びながら、風力発電!? ハイブリッドカーの技術を飛行機に

JAXAメールマガジン第241号(2015年4月6日発行)
飯島朋子

「電池残量の目盛りが初めて増えました!」
FEATHER事業の最終フェーズである飛行試験の最中、上空から嬉々としたテストパイロットの無線連絡が飛び込んできました。それを聞いた途端、世界初のモータ駆動による電力回生飛行の成功に、一同、「やった~!」とばかりに歓声が上がりました。

JAXAでは、モーターグライダーのエンジンを電気で動くシステムに変更して飛行実証するFEATHER(Flight-demonstration of Electric Aircraft Technology for Harmonized Ecological Revolution)と呼ぶ研究を進めているというお話は、メルマガ194号203号211号でもお伝えしてきました。先月2月には、航空自衛隊岐阜基地において最終的な飛行試験(※1)を行い、FEATHERの最大の特徴であるプロペラと駆動モータによる電力回生に成功したのです。

航空機用電動推進システムの最終飛行試験の様子。下はJAXA電動モーターグライダーに搭載された駆動モータ。

え? 飛行中の電力回生? それって何? と来ますよね。
え~とまず、皆さんは風力発電をご存知ですよね? 風力発電装置の上部に付いている「ブレード」と呼ばれる羽の部分に風が当たると、「ブレード」が回転し、その回転を「発電機」で電気に変換しているあれです。我々の電気飛行機にもプロペラがついていますので、そのプロペラを飛行中に回し、その回転を駆動モータで電気に変換したというわけです。

電気飛行機のプロペラや駆動モータは、普通の飛行機のプロペラやエンジンと同じく推進力を得るものです。ところが、モータというのは電気を流すと回転しますが、逆に電気を流さず外部から力を加えて回転させると、発電して電気を生み出すという特性を持っています。電気自動車やハイブリッドカーに乗っている方であれば、よくご存知のことでしょう。ハイブリッドカーなどでは、アクセルを離してモータへの電気が流れなくなったとき、惰性で転がり続けるタイヤの力をモータに加えてこれを回転させることで、発電して電気を生み出していますよね。

「ちょ、ちょっと待ってよ! 電力回生している時のプロペラというのは推進力を失い、代わりに抵抗になっちゃうんじゃないの? ハイブリッドカーだって、発電の抵抗でブレーキをかけた状態になってスピードがぐっと落ちちゃうし、「回生ブレーキ」なんて呼ばれるぐらいだもの。発電による抵抗は、飛行機にとって致命的ではないの?」なんて、察しの良い皆様からの疑念の声が聞こえてきそうです。

「はい、その通り! でも、実はそれも狙いなんですよ。」(^_^)

我々としては、この電力回生機能を「エアブレーキ(※2)」の代わりに使うことも狙っています。一般にモーターグライダーは、降下の際にエアブレーキと呼ばれる翼から出る抵抗板を開けたり閉めたりしながら、降下率を調整します。着陸させるために高度が高いなと思ったら、エアブレーキを開けて抵抗を増やすことで降下率を増やし、低いなと思ったらエアブレーキを閉めます。FEATHERの電力回生機能は、発電しながら降下率制御も行っちゃおうという優れもの、発電による抵抗を利用しちゃうというわけです。
今回のFEATHERの飛行試験では、エアブレーキを一切使わず、電力回生機能によって発電しながら着陸するということに成功しました! 私の知る限り、これも世界初でしょう。この飛行実証に関しては、有名な航空写真家の方が我々の活動に興味をもたれ、素敵な写真を撮って下さいました。その取材に関しては、最近、私の好きな雑誌である「航空ファン5月号(※3)」に取り上げられました! ご興味のある方はお読み頂ければ、さらにご理解が増すかと思います。

ところで、モーターグライダーからエアブレーキがいらなくなるということは、重量が軽くなるだけではなく、パイロットがエアブレーキを制御する操作装置がいらなくなることになります。JAXAではパイロットの負担を減らすことにもこだわり、推進力を得る力行と、発電する電力回生を別の操作装置を使うのではなく、スロットルレバー1本で制御できるように設計しました。
今回の試験では、発電量最大がエアブレーキ開、発電量最小がエアブレーキ閉の操作フィーリングになるように、発電と抵抗の味付けにも苦労しました。この味付けが最後まで課題として残りましたが。

ちょっと、未来の電気飛行機による飛行を想像してみて下さい。
電気飛行機はCO2を排出しない。
降下しながら発電もして、さらに降下率制御も行える。
「おっと~、電力を使い過ぎちゃったな~。上昇気流あるから発電して電力貯めていくか~。」なんてエコフライトを実現。
今までの飛行機では考えられなかった「Harmonized Ecological Revolution」が今回のFEATHER事業では達成しました! メルマガ203号でも述べた「人にも優しく、環境にも優しい」電気飛行機の実用化がすぐそこまでせまっています。

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