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宇宙航空研究開発機構

クリスマスの思い出(後編)

2017年11月20日
廣谷智成

こんにちは、空力技術研究ユニットの廣谷 智成です。

最近、街を歩いているとクリスマスツリーを見かけるようになりましたね。もうそんな時期なのだなあと思いつつ、今回は前回(第292号 クリスマスの思い出(前編))の続きでクリスマスの思い出話を。別のクリスマスの話ですが。

高速飛行実証(HSFD)フェーズⅠの飛行試験はキリバス共和国のクリスマス島で行われ、私は主に支援作業の交代要員として参加しました。クリスマス島の南東部には定住している人がおらず、南東部にあるイーオン飛行場周辺が飛行試験エリアとなっていました。
通常作業の日(飛行試験に向けた準備作業の日)は、私は先発隊として本隊よりも早い時間にイーオン飛行場にある実験施設に行っていました。野鳥の活動を観察するためです。クリスマス島はアジサシやカツオドリなどの野鳥が多くいるところで、イーオン飛行場の近くでもアジサシがたくさんいました。野鳥が飛んでいる中で実験機を飛ばすとエンジンに野鳥が吸い込まれ、実験機が壊れてしまいます。ですので、野鳥の活動している時間帯に飛行試験はできません。(環境保護の観点でも良くないのだと思います。)とはいえ、野鳥が全く活動していない真夜中の、真っ暗な中でも飛行試験はできません。少し明るくなっていて、野鳥が活動していない時間帯をうまく狙う必要があります。そのため、日の出前に滑走路の近くに行って、何時頃から野鳥が飛び始めるのかを調べていました。
ホテルからイーオン飛行場まで車で小一時間、自分たちで運転して行っていました。イーオン飛行場までの道のりには難関が待ち構えています。カニです。クリスマス島にいるカニは爪が鋭く、車で轢くとタイヤがパンクすることがあります。できるだけカニを避けて行くのですが、そのうち不可能になります。夜間は所々、道がカニで埋め尽くされています。途中からはカニを轢かざるを得なくなるのですが、あまり気持ちの良いものではありませんね。幸い、私が車に乗っている時には一度もパンクしませんでした。イーオン飛行場に着くと、双眼鏡とカウンターを持って野鳥の観察(野鳥の会の人?)を行い、その後、実験施設の発電機を始動させて本隊の到着を待ちました。

本隊到着後はいろいろな仕事をしていたのですが、その中に気象観測がありました。実験機は水に強くないため、雨が降ると飛行試験はできませんし、実験機が屋外にある時に雨が降ると実験機にダメージを与えてしまいます。そのため、イーオン飛行場の端にある気象観測小屋で、降雨の予兆を把握するために、温度変化、湿度変化の記録を調べたり、気象レーダーで雲の様子を調べたりしていました。
クリスマス島は雲が生まれるところでした。近年は日本でも夏場に急に雨雲が発達して大雨を降らすようなこともありますが、何となく天気は西から移ってくるイメージがありますよね。でも、クリスマス島ではいきなり雲がわいてきます。気象レーダーで見ていると何もないところから急に雲が発生して、イーオン飛行場に向かって来ることもありました。何もないところから急に雲がわいてくるのが、とても不思議な感じがしたことを覚えています。飛行試験当日は、私は気象観測を担当していたので、気象レーダーと温度、湿度計を見張っていて、降雨の予兆がないかを試験の指揮担当者に伝えていました。

飛行試験期間中にも、もちろん休暇の日はあります。南の島なので休暇の日は海で遊べる!とはいきません。島の一部は湾になっていて海に入れるところもあるのですが、基本的に外洋にさらされた孤島なので、海岸のすぐ近くでも潮の流れがものすごく速く、とても危険です。膝上まで海に入ると、そのまま流されてしまうと聞いていました。実際、地元の人々も、民芸品を作るためか貝殻拾いをしていたようですが、決して海には入っていませんでした。

クリスマス島は、日本の都市部で暮らしている身としては、なかなか過酷な環境でした。もし、再びクリスマス島に行く機会があれば、、、ちょっと、遠慮したいかな?でも、時間が経つにしたがって、だんだん良い思い出になりつつもあります。


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