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宇宙航空研究開発機構

ひとが中心にいる研究を

飛行技術研究センター
舩引 浩平(ふなびき こうへい)

実は、就職先として航空宇宙分野を希望していたわけではない舩引さん。自分がしたい仕事をできる場所を探していたら、航空宇宙の世界に入り込んでいました。

JAXA入社前の後方乱気流遭遇経験

* 生体工学

生体(ひと)の持つ優れた構造や機能を学んで、工学的に取り入れようとする学問分野。

* 有限要素法

数値解析手法のひとつ。構造解析の分野で発達し、他の分野への応用も広がっている。

* 人間工学

ひとの生理的・心理的な特徴から見て、より快適な生活環境になるように諸道具や設備などの改善を図ることを目的とした学問分野。

大学生の時、生体工学*、その中でも特に義手に関する研究を行っていました。でも、大学院進学の際、勘違いから自分の希望とは違う研究室に入ってしまったんです。人間的なことをやりたいと思っていたのに、「宇宙構造物」の研究室に入ってしまいまして(苦笑)。「構造力学」や「有限要素法*」といったものを扱う研究室でした。そういうの、大嫌いだったのに(笑)。 就職を考えた時、やっぱりもっと人間的なことをやりたい、“人間工学*の研究がしたい!”っと思いました。そう考えて就職活動をしていたら、JAXAの前身機関の一つであるNALで人間工学関係の研究ができることを知り、 NALに就職しました。正直に言ってしまえば、別に、航空宇宙分野で無くても良かったんです。確実に人間的な研究をやることができれば。 結果的には、大学院での2年間の研究は無駄にはなりませんでした。数値シミュレーションと関係の深い研究を行っていたので、仕事をはじめて直ぐに役立ちましたね。

「科学」と「技術」の違いについて

わたしたちの役割は“世の中の役に立つ技術を確立すること”だと思うのですが、あまり先進的な技術を研究していても、それは役に立たない可能性があります。先進的過ぎると、役立つ技術として確立できた時には、より良い新しい技術ができている可能性が高いからです。かといって、まったく新しくないことをやっていても、それでは意味がない。現在行っている研究が近い将来、どの様に役立つのかを見越して研究を行うことは重要だと思います。
就職活動をしていた時、ある組織の面接で『科学と技術の違いは何だと思うか?』という質問を受けたんです。でも、わたしには答えが出せなくって・・・。未だに、答えは出ていません。科学と技術の違いについては、四六時中考えてますね。科学(サイエンス)は純粋に研究的な部分が強い。それに対して、技術(エンジニアリング)は世の中の役に立つものである必要がある。でも、そもそも“世の中の役に立つ”ということはどういうことなのか・・・そこから疑問になってしまうんです。
また、科学と技術のどこで線を引くかも難しいですね。例えば、より良いコックピットをつくるための研究では、ひとがコックピットに座って操縦し、こういう事象が起こるとこういう行動をとる、というデータを取ることが非常に大事なのですが、ここで集めたデータは科学に近い。でも、そのデータをもとにコックピットのデザインやディスプレーのデザインを考え、開発することは技術の部分になってきます。逆に、宇宙の進化を調べるための人工衛星を打ち上げる場合、その目的はとても科学的ですが、人工衛星や、それを打ち上げるロケットの開発には技術が必要です。

パイロットがセンサー

フライトシミュレーションを使って、よりよいコックピットシステムを研究開発しようとする時、重要になってくるのはコックピットに座るパイロットです。彼らは、いわばセンサーの役割を果たしてくれるわけですから。機体や操縦システムなど、様々なものをデザインし、その使い勝手が良いか悪いかを判断してもらうのですが、その判断結果にパイロットの主観が入ってしまう、という問題があります。
例えば、ある計器の研究開発をしていて、“この計器はよい”という意見が出たとします。でも、その計器が我々の意図する方向に本当に良いのかはその言葉だけではわかりません。その時点で確かなのは、“パイロットがその計器を良いと言った”という事実です。あるミッションを達成するために計器を改造しても、そのミッションとは関係のない部分を見て計器を評価している可能性も否定できません。ですから、根掘り葉掘り質問することで、本当に必要なデータを引き出していきます。そういった部分は、相手が人間だからこそ味わえる面白さでしょうね。

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