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宇宙航空研究開発機構

つくりだすひと

複合材グループ
石田 雄一(いしだ ゆういち)

航空宇宙の分野で役立つ新しい材料を開発するため、化学の分野からやってきた石田さん。材料以外にお料理もつくります。

新しい物質をつくる仕事

化学の面白みは“自分で新しい物質をつくれる”ということにあると思います。物質は原子からできています。原子には様々な種類があり、原子の組み合わせによって物質の性質は決まります。原子の組み合わせ方は理論上は無限にあるため、様々な性質を持った物質を作り出すことができます。実際には、その組み合わせ方はかなり限られてしまうのですが。
自分が思い描いた通りの物質が作り出せたときは嬉しく感じます。でも、良い物質ができるのは、実は“自分の予想を超えたとき”なんです。JAXAに入社して7年。これまでに2回、予想を超える物質を作り出すことができました。わたしの仕事は、耐熱性の高いプラスチックの研究開発です。ポリイミドという耐熱性の高いプラスチックを取り扱っているのですが、2005年と2008年に大変高性能なポリイミドの開発に成功しています(本誌『空と宙』参照)。
新しい材料の開発には実は「運」も大事です。どの様な性質を持った材料ができるのかは、実際に作ってみないと分からない部分も多く、とにかくたくさん作ることが基本となるからです。思うように材料の開発が進まない時には、昔の論文や文献を読み漁ったり、材料関係の学会で講演を聴くなどしてヒントを探し、打開しています。

食べることが好きです

旅行が好きで、日本国内は結構廻りましたね。旅の目的は“美味しいものを食べる”ことです。最近旅先で食べて美味しかったのは、宮城県の三陸地方にある気仙沼で食べた海の幸です。ウニやホヤがとても美味でした。その後、岩手県の遠野(とおの)でどぶろくを心ゆくまでいただきました(笑)。
食に対するこだわりですか? 安くて美味しいお店を見つける。たまに、自分でも料理をします。料理をするようになったのは大学に入ってからです。料理と化学合成は似ているところがあるんです。この素材とあの素材のどれだけの比率で混ぜて、X℃でY分加熱する、この調味料(原料)を入れると味(性質)がこう変わる・・・など。料理も合成も経験と勘が重要です。
博士論文のテーマは「多分岐ポリアミドの合成」でした。多分岐のポリマーには末端がいっぱいあるので、色々な機能のある分子をそこに付加することで、表面に高密度に機能を持たせた物質を合成することができるんです。その機能を持たせる前段階の基礎的な部分の研究を行っていました。

「信頼」と「責任」

実は、もともと航空宇宙に興味があったというわけではないんです。JAXAの前身機関のひとつであるNALに複合材センターという複合材料の研究をする部署があり、そこで高分子材料の合成の研究を行っている人材を探していました。知り合いの先生から募集の話を聞き、入社に至っています。
航空宇宙分野での研究開発ということで、入社当初はずいぶん戸惑いもありました。今でも少しありますね。ただ、航空宇宙出身ではない、化学という分野の専門家であることが強みにもなり得ると思っています。これはJAXAに限ったことではなく世界の航空宇宙の専門機関全体に言えることだと思うのですが、化学的に考察されていない部分というのが結構ある気がするんです。航空宇宙の専門家では気付けないそういった部分が眼に入ってくるので、そういった角度から研究に取り組むことができると思っています。
仕事を進める際に最も大切になるのは「信頼」ではないでしょうか。研究開発はひとりではできません。研究仲間やメーカーの方など、周りの人たちと信頼関係を持って取り組むことが大切になってきます。そのためには、自分自身も“信頼を得る”ことが重要ですね。そこには「責任」が欠かせなくなってきます。お互いに信頼関係を築きつつ責任を持って仕事に取り組むことが一番大切なのでは、と思います。研究そのものに対しては・・・「勉強」に尽きますかね(笑)

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