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宇宙航空研究開発機構

極低温燃料タンク用複合材料

将来の実用化に向けて研究開発されている次世代ロケット、再使用型宇宙輸送システムや、水素燃料航空機の実用化においては、液体水素(沸点-253°C)などの極低温液体推進剤のタンクを軽量化する必要があります。このため、極低温タンクのCFRP(炭素繊維強化プラスチック)化に向けた研究を行っています。極低温環境下でのCFRPタンクの実用化には大きく2つの技術的な問題があります。1つは極低温における熱変形の問題、もう1つは亀裂を通じた燃料の漏洩の問題です。
極低温タンクはCFRPで製作されるとはいえ、その他の配管やエンジンについては金属で製作されることになります。このため、どこかにCFRPと金属の接合部を作らねばなりません。現在はCFRPの口金の部分で金属とCFRPを接着することが考えられています。しかし通常、CFRPと金属の間には大きな熱膨張率の差があるため、極低温では大きな熱変形、熱ひずみが生じ、構造を破壊してしまうことが問題になっていました。そこで極低温で熱応力を緩和し、破壊を起こさない口金部形状を考案し、実際に直径1mの極低温タンクスケールモデルを-196°Cの液体窒素に沈めて冷却し、破壊が発生しないことを確認しました(図1)。今後は、冷却試験を継続するとともに、タンクに内圧を加え、構造に問題が無いことを確認する予定です。
CFRP推進剤タンクにはもう1つ解決すべき問題として、推進剤の漏洩があります。タンク構造の候補としては炭素繊維をエポキシ樹脂で固めたCFRPを考えていますが、温度が低くなるにつれてエポキシ樹脂に亀裂が生じやすくなってしまいます。CFRPは薄い板が板厚方向に何層も積層された構造になっていますが、板厚方向に亀裂が連結してしまうと、亀裂を通じて推進剤が漏洩してしまいます。これを防止するために、CFRPの中に推進剤漏洩を食い止めるための金属箔を挟み込む技術や、CFRPの一層当たりの厚さを小さくすることによって亀裂の発生を抑制する技術を提案し、Heガス漏洩試験を通じてこれを実証しました。

図1: 極低温タンク供試体と冷却試験の様子

参考
  1. [1] 吉村、小笠原、末益、JAXA-RM-12-012
  2. [2] Ogasawara T., Arai N., et al., “Titanium alloy foil-inserted carbon fiber / epoxy composites for cryogenic propellant tank application”, Advanced Composite Materials, in-print
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