回転翼機の発展の歴史-航空機として飛ぶ工夫-

JAXAメールマガジン第202号(2013年7月22日発行)
齊藤茂

こんにちは、飛行技術研究センター(ヘリコプター部門)の齊藤茂です。今回は、航空機の中で回転翼機について考えてみます。回転翼機と言うと、プロペラおよびロータを装備する航空機を含み広い定義となりますが、ここではやはりヘリコプターに限定します。誰もが知るレオナルド・ダ・ビンチが描いたヘリコプターの概念図はあまりにも有名です。この概念図は、ヘリコプターの飛行する原理を見事につかんでいると言えましょう。まさにヘリコプターは、空気を機体の下方向に向かって押し出す反動で浮かぶわけです。
ヘリコプターとして最初に飛行したのは、フランスのコルニュであるといわれています。さすがに自転車屋さんらしく、自転車のタイヤをうまく利用してロータにしています。前後にこのロータを付けたタンデム型となっています。彼は、1907年に高さ30cmを20秒間自由飛行をしました。もちろん、操縦装置などは付いていませんでした。浮かんだだけです。

爾来、ヘリコプターは、2つの大きな発明を機に大きく飛躍します。ひとつはフラッピング・ヒンジです。このヒンジをブレードの根元に取り付け、根元に作用するモーメントを逃がしてやります。ロータは回転しているため、ブレードには遠心力が働きます。この遠心力によるモーメントはブレードの揚力によって作られるモーメントとは逆方向のものとなります。この2つのモーメントが釣り合うようにブレードは傾くわけです。このときヒンジまわりのモーメントは零になり、ブレード根元にはもはや曲げるモーメントは作用しないことになりブレードの耐久性が大きく前進しました。
またもうひとつは、反トルク装置です。ヘリコプターはロータが回転しているためブレードの作用する抗力によりトルクが発生します。何もしないとロータの回転方向と逆の方向に回転してしまいます。これが反トルクというものです。反トルクを抑えるために、ヘリコプターでは2種類の考え方があります。
ひとつは、テイル・ロータの設置、他方は同じロータを取り付け反対方向に回すタイプのものです。この組み合わせでヘリコプターのタイプが変わります。最初はシングル型、後者は前後に取り付けるタンデム型、左右に取り付けるサイドバイサイド型、上下に取り付けるコーアクシャル型と呼ぶ。小型のヘリコプターは主にシングル型が多く、大型のものになるにつれて、ロータを2つ以上持つ機体となるのが普通です。

ヘリコプターの持つ特徴に、空中で静止(ホバリング)できること、前後左右に自在に飛行可能なことが挙げられます。とくにホバリングと左右と後ろへの飛行は、従来の固定翼機では考えもできないことでした。ホバリング自体は、ヘリコプターのロータが上に向いていることから自重と釣り合えば可能です。
しかし、機体の方向を変えず左右や後方に飛行するにはロータに一工夫が必要です。これを実現するのはロータに作用する合推力の方向を自在に変えることにできる可変ピッチ機構です。これもヘリコプタにおける第3番目の発明です。まだまだ、航空機としてヘリコプターが飛行できるようになるには様々な工夫または発明がありますが、次回に回したいと思います。何事でもそうですが、現在実用になっているものは、画期的な技術のステップがあって今日があるということです。古い諺に「必要は発明の母」があります。まさに実感として伝わってきます。