JAXA実験用ヘリコプタの○○なはなし(3)

2020年6月22日
町田章太郎

飛行技術研究ユニット、町田です。
2月から連載したこのコラムも今回で一旦終了です。JAXAのヘリコプタ整備士がヘリコプタに関する〇〇な話を語る。最後はパイロット状況認識支援技術「SAVERH」(Situational Awareness and Visual Enhancer for Rescue Helicopter)飛行試験中の話をご紹介します。

パイロット状況認識支援技術は、夜間や視界が悪い状況下でヘリコプタの安全運航を支援するもので、将来、災害時や救難現場で活躍する技術です。
飛行試験は、大樹航空宇宙実験場周辺で日中と夜間に行われます。
ここでは、夜間フライトの話をしていきます。寒さも増す季節、この時期は秋の夕日がとてもきれいで大自然を感じます。

実験用ヘリコプタは、パイロット2名、研究者4名を乗せて、離陸しました!
やがて辺りは暗闇に包まれて360度、星空の世界に変わっていきます。
夜空の星がとても近くに感じて手が届きそう、感動的です!
実験用ヘリコプタは、暗闇の中、事前に打ち合わせていた方案をもとに飛行試験を繰り返し、たくさんのデータを取得していきます。

(飛行試験中の映像はこちらでご覧いただけます。)

飛行試験中、整備士は無線を聞きながら様子を見守り、着陸後に行う飛行後点検の準備を行います。
そして、飛行試験が終わっていよいよ着陸、夜間照明が設置された場所へアプローチ。
着陸後、パイロットと研究者たちは、疲れきっていますが、無事に試験が終了した安堵の表情でヘリから降りてきます。
夜のフライトは昼間と比べ何倍もの神経や気を使いとても疲れます。

この写真からみても実験場の周囲が本当に真っ暗なのがわかりますよね。
SAVERHの飛行試験では、日中と夜間に飛行試験を繰り返し、3週間ほど大樹航空宇宙実験場に滞在します。時にはキツネや丹頂鶴、鹿に出会うこともあるんですよ。
さらに実験場には、ヒグマも現れているようです!(熊には出会いたくないかな)
本当に自然豊かな北海道ならではですね。

いろいろな話をしてきましたが、実験用ヘリコプタのほんの一部ですが見ていただけたのではないでしょうか。今までいろんな飛行試験が行われてきました。実験の内容によって装備も変わりますし状況も変わりますが、安全第一に運航することがとても重要です。整備士は広い視野をもちヘリコプタを含めた運航全体を見て異常がないかを観察しています。JAXAの実験用航空機は、みなさまの生活がより安全で豊かになるために、これからもたくさん活躍していくことでしょう。

ヘリコプタの整備士目線で話をしてきましたが、いかがでしたか。
もっと深い話が聞きたいなど、リクエストがあれば、続きがあるかも・・・。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

関連リンク