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宇宙航空研究開発機構

複合材料技術

VPH成形技術で製作した供試体

ボーイング787型機が2012(平成24)年に運航を開始し、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を始めとする複合材料という言葉を頻繁に耳にするようになりました。複合材料は、異なる特性の材料を複合して1つの材料として使用しているもので、炭素繊維やSiC(炭化ケイ素)繊維などを用いて繊維強化した材料として使用することで、これまでの金属材料に比べ、軽量で高強度な構造を創出することが可能となり、航空機や宇宙機器の性能をより高くすることに貢献できます。
今後更に厳しくなる航空機の軽量化要求や環境基準、航空機安全性の確保に対応するためにも、複合材料が使われる比率はますます多くなっていくと思われます。このように複合材料は未来の私たちの生活に大きく貢献できる可能性がありますが、長年培われてきた金属材料の設計や製造、整備、リサイクルの能力と比較すると、まだ新しい材料である複合材料が普及していくための障壁があり、これらを明らかにして改良あるいは設計技術について研究し、経験を積んで技術を蓄積・公開していく必要があります。また、これから20年後の材料技術を見据えて、次世代の複合材料を創出していくことについても不断の研究が必要です。
JAXA航空技術部門は、国内で唯一、複合材料の研究開発に特化して整備された強度試験評価装置、物性評価装置、非破壊検査装置等を用いて、現在の複合材料の弱点克服や破壊メカニズム等、未知の部分を解明し、材料の性能向上や設計技術への応用を目指した研究をはじめ、航空機設計技術に必要な解析技術の研究、複合材料・構造に対する技術実証等を行い、我が国の航空宇宙産業への貢献を目指します。
また、現在の複合材料よりも高い強度や新機能を有する次世代の複合材料の創出を目指し、耐熱ポリイミド複合材料、超耐熱無機系複合材料、超軽量アブレータ、ナノ複合材料等の創出に関する研究開発を進めていきます。更に、複合材料を広く使用していただくために必要な試験方法をJISやISOとして規格化していくことや複合材料データベースの公開を通じ、我が国の複合材料産業競争力の保持・拡大に貢献します。

複合材料創生に向けた研究

高機能ポリイミド複合材料

軽量、高耐熱かつ高強度なポリイミド/炭素繊維複合材料を実用化レベルに上げ、従来チタン合金などによって構成されている航空機エンジン構造・宇宙機耐熱部位などの高温部材に適用することを目的としています。

カーボンナノチューブ複合材料

CFRPを凌駕する新しい複合材料として期待されるカーボンナノチューブ複合材料について、量産技術の確立や信頼性の向上などを目指し、研究開発を進めています。

ナノカーボン機能性複合材料

カーボンナノチューブ(CNT)とグラフェン(Graphene)の単体を用いて複合材料化するだけではなく、他の金属物質等とのハイブリッド化により、強化材特性を向上あるいは新しい特性を付与し、さまざまな分野に応用可能な多機能性複合材料の創製に関する研究を進めています。

再突入カプセル用軽量アブレータ

回収カプセルや宇宙機を再突入時の高熱から守るため、炭素繊維とポリイミド樹脂で構成される炭化型アブレータを研究しています。

航空機エンジン用SiC/SiC複合材料

航空機エンジンの更なる軽量化と高推力化のため、燃焼ガスで駆動する低圧タービンの構成材料を現在のNi基耐熱合金からSiC繊維強化SiCマトリックス(SiC/SiC)複合材料に置き換えることを目指した研究開発を行っています。

CFRPリサイクル技術

CFRPのリサイクル技術に関する基礎的な調査や検討を行い、高性能な炭素繊維が使用されている航空機構造から、再度CFRP部品に適用できることを目指した複合材料の創成に関する研究を進めています。

複合材料設計・解析技術の高度化に関する研究

複合材構造要素への貫通衝撃試験

複合材を用いた胴体構造では損傷形態やその後の挙動を明らかにするため、複合材に対する貫通衝撃試験によって、損傷の進展挙動を解析します。

航空機エンジンへのCFRP適用に向けた基礎研究

CFRPの航空機エンジンのファンシステムへの適用を目指して、CFRPの高速飛翔体衝突特性を明らかにする高速飛翔体衝突特性の基礎研究を行っています。

複合材破壊様相の高速撮影による研究

複合材料が破壊するメカニズムと、破壊時の材料の変形挙動を明らかにすることを目指して、高速度カメラによる破壊挙動の可視化と、DIC(画像相関)法による高時間分解能を持った変位挙動解析の研究を進めています。

複合材の層間強化技術

積層構造のため内部の層の剥がれが生じると、圧縮強度(衝撃後圧縮強度)が大きく低下するという問題があるCFRPの問題を克服するために、複合材の層間強化技術に関する研究を進めています。

複合材料の雷撃損傷

複合材料に対する被雷時の構造安全性をより高めることを目指し、複合材料の雷撃損傷に関する研究を進めています。

複合材料の吸水及び電蝕に関する研究

海水や酸性雨などが浸透すると「電蝕」現象が発生するCFRPについて、吸水テストに電位計測を組み合わせることによる防蝕方法についてのデータ取得や、未来の航空機へ向けたCFRP・軽量合金コンビネーション構造の設計方法や運用基準へ反映させていきます。

極低温環境における複合材構造

次世代ロケット、再使用型宇宙輸送システムや、水素燃料航空機の実用化に必要な、液体水素などの極低温液体推進剤タンクのCFRP化に向けた研究を行っています。

複合材の長期耐久性に関する研究

CFRPの長期耐久性を保証し信頼度を非常に高いものにするため、高温暴露環境や冷熱サイクル環境を実際にCFRPに付与し、その後の材料強度等を評価しています。

脱オートクレーブ複合材成形技術実証

CFRPの新しい成形法として、従来のオートクレーブ成形法より安価に製造できるVaRTM成形法やVPH成形法の研究・評価を行っています。

航空機複合材修理技術

航空機複合材構造を安全・確実に、早く低コストに修理するため、基礎的な研究を続けています。

複合材料の普及展開に向けた取り組み

複合材料試験標準化の推進

これまで培ってきたCFRPの評価方法の成果を産業界に利用していただくため、評価方法の標準化(JIS化、ISO化)を進めています。

複合材料データベース構築

我が国の航空宇宙産業の国際競争力強化の一助となるべく、これまでの複合材料技術研究の成果を先進複合材料力学特性データベース(JAXA-ACDB)として公開しています。

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