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宇宙航空研究開発機構

コアエンジン

図1:斜流圧縮機

コアエンジンは、極超音速ターボジェットの中核要素で、通常のジェットエンジンと同様に、圧縮機、燃焼器、タービンから構成されます。燃料として水素を用いる点が特徴です。
小型実証エンジンの構成要素として、圧力比6の斜流圧縮機を新規に設計しました(図1)。斜流圧縮機とは、圧縮された空気が斜め方向に流出する圧縮機の総称で、比較的小さな前面面積で比較的高い圧力比が得られるという特徴があります。遠心圧縮機は1段当たりの圧力比を最も高く取れますが、その反面、直径が大きくなるとともに、大流量を流しにくいという問題があります。一方軸流圧縮機は小さな前面面積で大きな流量を流せますが、1段当たりの圧力比はあまり大きく取れません。高い圧力比を得ようとすると多段化する必要があり、構造が複雑になるという問題があります。

我々が開発している極超音速ターボジェットでは、圧縮機の圧力比が6と高負荷であるとともに、エンジンの外部抵抗を低減するために外径の寸法制限が厳しく、また小型エンジンのため構造の簡単化が求められたため、斜流圧縮機を選定しました。
また、水素燃料に対応した燃焼器を新規に設計しました。小さいジェットエンジンでは、圧縮機とタービンを結ぶ軸の振れ回りが問題になるため、なるべく軸の長さを短くする必要があります。これを実現するために、逆流アニュラー形式の燃焼器を採用しました。製作した燃焼器を図2に示します。一般の燃焼器と異なり、圧縮機やタービンの流れの方向と逆向きに燃料と空気の流れが形成されています。燃焼ガスは再度方向を変えてタービン入口に進みます。燃焼器で用いられる燃料は(途中の過程で気化した)気体水素です。水素は比較的燃焼に関わる問題が少ない燃料と言われていますが、小形の燃焼器で確実に燃焼させるために、空気と水素燃料の混合を促進する工夫を燃料噴射器に取り入れました(図3)。

図2:逆流アニュラー形式の水素燃焼器

図3:燃料噴射器の混合促進法

燃焼器の設計製作に当たっては、簡易解析法と部分的なCFD解析を実施し、点火・燃焼特性の把握に当たっては、20個配置される燃料噴射器の1個分だけ切り出して模擬した単管燃焼試験模型を製作し試験しました。図4に単管燃焼試験模型の写真を示します。この試験の結果を反映し、最終的な設計を行いました。完成した燃焼器の燃料噴射器を図5に示します。

図4:単管燃焼試験模型

図5:燃焼器の燃料噴射器

燃焼器の燃焼試験は、JAXA調布航空宇宙センターの高温高圧燃焼試験設備を利用して、入口条件を各飛行条件に適合した温度・圧力となるように調整して実施しました。加圧条件下での試験なので、下流まで含めて図6のように燃焼器をケーシング・ダクト内に収めて試験を行いました。試験は、地上静止状態からマッハ6飛行条件まで行い、試験を行った全ての条件下で、熱構造的な問題を生じず良好な燃焼性能が得られることを確認しました。逆流燃焼器は、側方からの可視化が困難な形態なので、図7に示すような燃焼器出口後方部の可視化画像と、温度・圧力の計測項目を確認しながら試験を進めました。また、ライナー面に感温塗料を塗布し、試験終了後に色変化を確認しました。図8には、試験前と試験後の燃焼器壁面写真を示します。この色変化の観察結果からも、壁面の冷却が適切に機能し、熱構造的な問題がないことが確認されました。

図6:燃焼器の燃焼試験

図7:燃焼器出口後方部の可視化画像

図8:燃焼器壁面写真(左:試験前、右:試験後)

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