宇宙航空研究開発機構

MuPAL-ε 空港周辺気象観測@仙台空港

17日(日)、MuPAL-ε が仙台入りしました。18、19日の2日間、仙台空港で空港周辺の気象観測フライトを行ないます。
この観測フライトは、昨年8月にも行ないました(2006年8月22日実験用航空機レポート参照)。

快晴の仙台空港。空港には新しく鉄道が開通していました(右写真左上が駅)。

今回の観測フライトは、電子航法研究所(ENRI)、情報通信研究機構(NICT)、東北大学と連携して実施しており、その目的は以下の2つです。
(1)空港周辺の局地気象予報の精度向上のためのデータ収集
航空機の運航に影響を与える乱気流や視程障害(雲、霧など)の発生時間、場所を正確に予報する局地気象予報システムの開発に用いるため、海上を含む空港周辺の大気条件のデータ(風向・風速/気温/露点(湿度)など)を収集します。今回は特に「海風前線」と呼ばれる風向・風速が局所的に変動する現象の観測にターゲットを置いています。海風前線は朝早い時間に発生しやすいため、フライトは朝8時の離陸となります。
(2)後方乱気流の挙動解析の精度向上のためのデータ収集
後方乱気流(航空機が飛行した後に発生する乱気流)の移動、減衰過程を推定する数値シミュレーション技術の開発に用いるため、大型旅客機の離陸前後に滑走路上の大気データを収集します。

MuPAL-ε は飛行高度を変えながら空港周辺を飛行して観測を行います。それに合わせて地上からはドップラーライダ(レーザ光を用いて上空の風向・風速を観測する装置)を使った観測を行います。ENRIとNICTが所有する2台のライダを同時に用いて、広い空域の風を短時間で計測できるデュアルライダ計測を実施しました。MuPAL-ε のデータを使ってライダのデータを検証することによって、より精度の高いデータを取得できるというわけです。

MuPAL-ε の飛行経路とデュアルライダの計測域



仙台空港では普段は一般のスポットに駐機するのですが、今回は空港がオープンするより早い時間から準備を始める必要があったため、ENRIのスポットを使わせていただきました。



15時過ぎ、実験を終えてMuPAL-εが帰ってきました。朝は6時過ぎから準備して、2時間以上のフライトを1日2回こなすハードな実験でした。


仙台空港は滑走路を2本持ち、国内線・国際線の定期便、航空大学校や海上保安庁の機体が飛ぶ忙しい空港です。今回も、管制官を始めとする関係者のご理解、ご協力を得て、ミッションを無事に終了することができました。

MuPAL-εの母機であるMH2000は、現在日常的に飛行している機体は日本で(というより世界で)2機だけです。加えて、MuPAL-εは実験用に特殊な装備品を搭載していることもあり、航空ファンの方から「撮影したい」というご要望をいただくことがよくあります。飛行スケジュールを事前に公開できれば良いのですが、試験の都合等で直前に変更されることもあるため、お問い合わせをいただいてもお知らせできないことになっています。今回は、「無線を聞いてJA21ME(MuPAL-εのコールサイン)が来ることを知り、駆けつけてきた」という方にタイミング良く撮影していただくことができました。「実験用航空機レポートをいつも見ている」とも言っていただき、関係者一同嬉しく思いました。「最近更新が遅いのでは?」という鋭いご指摘もいただきました。このレポートは実験現場の生の雰囲気をお伝えするのが目的ですので、より迅速な更新を心がけたいと思います。

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