3月19日から30日までの間、新石垣空港で実施された将来型着陸誘導システム「GAST-D」の評価実験に、実験用航空機「飛翔」が参加しました。
今回の実験は、独立行政法人電子航法研究所(ENRI)と同時に行うもので、JAXAからは「飛翔」が、ENRIからは昨年運用を開始したばかりの「よつば」が参加しました。2機の実験用航空機が並ぶ姿は壮観です。
※「よつば」についてはこちら(外部リンク)をご覧ください。
地上型衛星航法補強システム「GBAS(Ground-Based Augmentation System)」は、GPS衛星と地上からのGBAS補強信号を航空機に搭載したGBAS機上装置で受信することで、現在多くの
空港で使用されている計器着陸システム(ILS)と同等、もしくはより高い精度の誘導を可能とするシステムで、悪天候で視界が悪い場合でも安全に着陸できるようになります。ENRIが開発して新石垣空港に設置したGAST-D(GBAS Approach Service Type D)研究用装置は、国際基準策定が進められつつあるGBASの中でも特に高精度なカテゴリーIIIに分類されるものです。
DREAMSプロジェクトでは、航空機を空港の滑走路へ精密に着陸誘導するため、衛星航法装置とINS(慣性航法装置)を組み合わせ、航空機の位置情報の信頼性を上げる"高精度衛星航法技術"の研究を行っており、今回の試験はその一環として、衛星航法の信頼性を妨げる電離圏プラズマバブルの影響の評価を行いました。
GPS衛星から送られる信号は、高度90~1000キロメートルにある電離圏の状態に大きく影響を受けます。赤道を挟んだ低~中緯度の電離圏では、プラズマバブルと呼ばれる現象が春や秋の夜間に発生することがあります(このためこの時期に石垣島周辺で試験を行いました)。プラズマバブルは、電離圏で局所的に電子密度が減少する現象で、泡状の構造を持っていることからプラズマバブルと名付けられています。プラズマバブルが発生すると、プラズマバブルを通過したGPS信号の振幅や位相に急激な変動が起きてしまうため、GPSを利用した航法に深刻な障害を与えることが知られています。
「飛翔」と「よつば」は、プラズマバブル発生の可能性が高まり始める夜20時~21時頃に、新石垣空港を離陸。
漆黒の闇へと飛び立っていきました。
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