宇宙航空研究開発機構

その1 有人機・無人機連携技術の研究

2008/07/24付のレポートで有人機・無人機連携技術の予備実験の様子をご紹介しましたが、今回は実際にMuPAL-εと無人機が飛行中にデータ通信を行って、MuPAL-εの計器板に無人機の飛行状況を表示する実験です。

本実験は、ヤマハ発動機(株)との共同研究として実施しています。同社は、産業用無人機の開発・販売において世界有数の実績を有しています。今回の実験で使用した無人機は、同社が開発した産業用無人ヘリコプタで「自律航行型RMAX」と呼ばれる機体です。

実験場所は、同社が運用する無人機のテスト場で、静岡県掛川市にあります。無人機は、テスト場内を高度100ft(30m)以下で飛行します。MuPAL-εは、その上空を高度500ft(150m)以上で飛行します。無人機の飛行データをMuPAL-εに無線で送信し、ディスプレイに表示してパイロットが無人機の飛行状況を把握できることを確認するのが実験の目的です。

午前10時、無人機がテスト場に到着しました。専用のワンボックスカーで運び込まれ、組み立て、飛行準備があっという間に終わりました。

実は、この実験は11月26日に実施する予定だったのですが、前日になってデータ通信プログラムに不具合があることが分かったため、急遽12月1日に延期になりました。MuPAL-εは、この日のうちに機体点検のために名古屋に行く必要があるため、実験ができるのはこれがラストチャンスになります。入念な実験用システムのチェックを終えた後、MuPAL-εは午前10時20分に調布飛行場を離陸しました。

午前11時、MuPAL-εからあと5分ほどでテスト場上空に到着するという無線連絡が入り、RMAXが離陸します。

RMAXの飛行制御システムです。パソコンに表示される地図上の任意の点をクリックしていくと、その経路どおりに正確に自動飛行することが可能です。左に見えるモニタには、RMAXに搭載されているテレビカメラから送られてくる映像が映し出されています。

RMAXの自動飛行制御システムが万一故障した場合に備えて、ラジコンのベテランパイロットが常にスタンバイし、直ちに手動操縦に切り替えられるようになっています。

MuPAL-εがテスト場上空に到着しました。写真右上に小さく写っています。

実験用ディスプレイに無人機の飛行状況が表示されます。

ディスプレイの表示例です。無人機の飛行予定空域(テスト場)と、実際の無人機の飛行位置(黄色い○印)が表示されています。無人機のシンボルの下に書かれている数字「-04」は高度差が400ft(約120m)あることを示しています。

上がMuPAL-ε、下が無人機のヤマハRMAXです。写真では非常に接近しているように見えますが、水平方向に200m、高度方向に400ft(約120m)ほど離れているのを望遠レンズで撮影したものです。機体の全長(ロータや突起物を除く)は、MuPAL-εが12.2m、RMAXが2.8mですが、ほぼ同じサイズに写っています。

MuPAL-εからテスト場を見下ろした写真です。写真中央にRMAXが小さく写っています。

地上の端末では、MuPAL-εとRMAXの両方の飛行状況をモニタすることが可能です。

MuPAL-εは、テスト場の周囲を数度旋回したり、テスト場の横でホバリングしたり直進飛行したりしました。実験終了後は、約50km離れた静岡へリポートに着陸しました。

今回の実験で、MuPAL-εの実験用ディスプレイに無人機の飛行状況が正しく表示されることが確認できました。
無人機技術の発達により、災害時に無人機を活用することが可能になりつつあります。無人機は有人機が飛べないような低い高度や狭い場所でも飛べるため、例えば崖崩れや倒壊した建物の下に埋もれて救助を必要としている人を発見し、有人機にその場所を伝えて救助隊員を現地に派遣する、というような連携も可能になります。このような場合、有人機が到着する前に無人機は現場を離れて衝突の危険性を避ける必要があるため、今回実験したようなシステムが役に立ちます。来年度以降、実際にこのような活動を想定した実証実験を実施したいと考えています。

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