宇宙航空研究開発機構

GPSを用いたPinS計器進入方式の試験飛行

1月28日~2月1日の間、MuPAL-εを用いて「Point in Space(PinS)」と呼ばれる計器進入方式の試験飛行を実施しました。

今回の試験では、立川広域防災基地、ホンダエアポート、アークヒルズ屋上ヘリポートに試験的にPinS方式を設定し、設定した経路を飛行する上での問題点(周辺障害物の影響、パイロットのワークロード等)や、GPSとMSAS(衛星航法補強システム)の受信状況の確認などを行いました。 設定した経路はPinSによるIFRを想定したものですが、実際の試験飛行はVFRで行いました。
(※IFRについては2007年7月5日実験用航空機レポート参照)


ホンダエアポートへの進入の様子です。高度1000ft(約300m)に設定された進入復行点(MAPt)まで進入の模擬を行った後、進入復行経路を上昇しました。


アークヒルズ屋上ヘリポートへの進入の様子です。都心部で許容される最低飛行高度1500ft(約45m)に設定された進入復行点まで進入の模擬を行った後、進入復行経路を上昇しました。


試験用に開発したパイロット用ディスプレイの表示例です。右側には定められた経路や保護空域(経路の幅)等の情報、左上にはGPSとMSASの受信状況を表示しています。左下は従来計器である水平位置指示器(HSI)を模擬したもので、黄色い線が左右に動いて定められた経路からのずれを表示します。


試験飛行の途中で、調布飛行場の上空を通過しました。普段は離着陸しか行わないため、このような角度から調布飛行場を見るのは新鮮でした。


立川広域防災基地への進入の様子です。高度600ft(約180m)に進入復行点を設定し、滑走路末端、地上高度290ft(約88m)まで進入した後、滑走路上を通過(ローパス)しました。



ヘリコプターに適した低高度のIFRルートの試験飛行については、従来から実験用航空機レポートでもご紹介してきました。
2007年7月5日「MuPAL-ε、GPSを用いたIFRルートの飛行試験 「IFRとは?」」
2007年8月21日「MuPAL-ε、GPSを用いたIFRルートの飛行試験「精密進入って?」」


ヘリコプターに適したIFR方式については、現在、国土交通省航空局の「将来の航空交通システムに関する長期ビジョン(CARATS)」の推進協議会などにおいて実用化に向けた検討が進められているところです。
JAXAにおけるこれらの研究は、国土交通省航空局ならびに総務省消防庁との協力のもとで進められており、また、今回の試験飛行は、陸上自衛隊東部方面航空隊、同管制気象隊、東京消防庁、本田航空株式会社、埼玉県防災航空隊、森ビルシティエアサービス株式会社、朝日航洋株式会社等の関係諸機関のご協力を得て実施しました。


立川広域防災基地とホンダエアポートは、地震などの大規模災害時にヘリコプターの運航拠点となることが想定されています。また、アークヒルズ屋上ヘリポートからは、成田空港までの旅客輸送が行われています。これらの場所でPinS方式が実用化されれば、災害救援や旅客輸送の分野で、ヘリコプターの利用拡大の効果が期待されます。

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