宇宙航空研究開発機構

飛翔の主翼はどのくらい変形するのか!?

11月3日、実験用航空機「飛翔」の主翼変形量計測試験を実施しました。


飛行機の主翼が変形して大丈夫なの? と思う方もいると思いますが、どんな材料の翼であれ、地上では重力が、飛行中では空気の力がかかることで変形します。むしろ変形しないように作ると、重くなるだけでなく、かえって簡単に折れてしまうことも考えられます。


例えば上の写真のように、「飛翔」の主翼も地上静止時に比べ、水平に飛行している時は翼端が上がっており、旋回してより大きな力がかかるとさらに翼端が上がります。

航空機の設計では、風洞試験やCFD(数値シミュレーション)でどれくらいの力がかかるのかを予測して変形量を推定し、変形量を配慮した設計が行われます。地上で静止した状態で主翼に100%以上の荷重をかけても破損しないことを確認する試験も行います。

しかし、飛行中に航空機がどのくらいの力を受けて、どのくらい変形するのかを推定しても、実際にどのくらい主翼が変形するのかを計測する技術はありませんでした。


写真にある、飛翔の主翼にあるのはドット柄の模様ではありません。計測の目印として貼り付けたターゲットマーカーです。これを26カ所に貼り付けます。並んだ3枚の写真は貼り付けたターゲットマーカーを拡大したものです。主翼の端にいくほど、ターゲットマーカーのサイズは大きくなります。


計測は、窓に沿って設置したカメラで行います。機体前方(コクピット側)の窓に2台、機体後方(尾翼側)の窓に2台、計4台のカメラで、地上と飛行中にターゲットマーカーを機内から撮影します。前方のカメラ1台と後方のカメラ1台がそれぞれペアになっており、翼全体を写すペアと、翼端にフォーカスしたペアの2種類になっています。


機体後方(尾翼側)カメラ


機体前方(コクピット側)カメラ



ペアのカメラを使ってステレオ計測(写真測量法のひとつ)を行い、画像をデータ処理することで、ターゲットマーカーの位置が3次元的にどのように移動したのかを算出します。その結果、主翼がどのように変形しているのかを知ることができます。



今回は、能登沖のG空域と呼ばれる空域で、4時間ほどのフライトを行いました。


今回の試験では、地上静止時と水平定常飛行時との変形量は、飛翔の片側主翼7m長に対して、主翼翼端部で最大160ミリメートルたわみ、1.0度ほどねじれたという結果が得られました。
主翼に複合材が使われた航空機は今後増加していくと予想されています。複合材が使われた場合、飛翔のようなジュラルミンで作られた主翼よりも変形量は大きくなるため、こうした手法はさらに重要となっていきます。


JAXAでは、光学的変形量計測技術の確立を目指して今後も試験を続けていきます。


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