COLUMNコラム

2021.4.6

特殊気象から航空機守る

特殊な気象環境から航空機を守るため、気象影響防御技術(WEATHER-Eye)の研究開発への取り組みを2015年から開始するとともに、16年からは産学官でコンソーシアムを結成しオールジャパン体制で研究開発を加速させている。

年1万件超発⽣

航空機運航にとって雪氷・雷・⽕⼭灰・乱気流などの特殊気象は安全上の⼤きな問題となっている。国際航空運送協会(IATA)のリポートによれば、15-19年の5年間の世界の航空死亡事故の最⼤要因は特殊気象であり、40%の事例において何らかの気象現象が事故の主要因あるいは背景要因となっていた。

幸いにも⽇本のエアラインによる定期運航の旅客機では、気象が直接の要因となる死亡事故は発⽣していないが、滑⾛路雪氷によるオーバーラン事故や、乱気流による揺れでの乗員・乗客の負傷などが発⽣しており問題となっている。また、巡航中の悪天域の回避、離着陸時の悪天候による待機、機材の不具合など、特殊気象を要因とする遅延や⽋航などが⽇本の空において年間1万件以上発⽣しており、運航へ甚⼤な影響を及ぼしている。

これだけの遅延・欠航が生じる要因として、日本の気象環境が世界でもトップレベルに過酷であることが挙げられる。世界でも最多の降雪量、氷晶と呼ばれる氷の粒が大気中に滞留する、冬季雷と称される高エネルギーの雷が冬季に発生する、活火山が多く噴煙が大気中に舞う、上空に晴天乱気流が多く発生するなど、枚挙にいとまがない。

滑⾛路雪氷検知

気象影響防御技術の研究開発では、これらの過酷な気象環境においても安全にかつ効率的に運航が可能になるよう、特殊気象を検知・予測し、防御・回避するためのさまざまな技術の開発に取り組んでいる。滑⾛路上の雪氷をリアルタイムでモニタリングする技術、航空機への被雷を回避するために気象状況から被雷危険性を予測する技術、被雷による損傷を低減する導電性炭素繊維複合材料や着雷位置の制御技術、航空機エンジンへの着氷や⽕⼭灰による損傷を防ぐ技術、⼤気中の⽕⼭灰や氷晶エリアを回避するためにライダーで検知する技術、前⽅の乱気流を検知して機体を予⾒制御することで揺れを低減する技術など、いずれも世界的に⾒てもユニークな研究である。

センサー開発

昨今の新千歳空港における⼤規模な遅延・⽋航、オーバーラン事故が⽰すように、本格的な冬を迎えるに当たり雪が航空機にとって問題となってくる。この問題を少しでも解決すべく、滑走路雪氷検知技術として、世界初となる滑⾛路雪氷モニタリングセンサーの開発に取り組んでいる。

滑⾛路に、レーザー光源とカメラを埋設し、滑⾛路表⾯の雪氷にレーザー光を照射、カメラで撮影した雪氷による光散乱の様相から雪氷の種類や厚さを同定する仕組みである。このセンサーにより、リアルタイムで滑⾛路の雪氷状況を把握することで、適切な離着陸判断や除雪判断が可能となり、冬季の運航安全や運航効率が⼤きく向上することが期待される。現在、福井や北海道での空港実証に向けて研究開発が進んでいる。

気象影響防御技術(WEATHER-Eye)での取り組み

気象影響防御技術(WEATHER-Eye)での取り組み

滑走路雪氷検知技術

滑走路雪氷検知技術


※本コラムは2021年1月時点の情報となります。

1993年航空宇宙技術研究所、03-04年⽶デューク⼤学研究員、06-09年国⼟交通省航空局に出向、15年から気象影響防御技術の研究開発に従事。博⼠(⼯学)、技術⼠(航空・宇宙部門、総合技術監理部門)

航空技術部門次世代航空イノベーションハブ副ハブ⻑
神⽥ 淳

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