COLUMNコラム

2021.4.26

航空機装備品、認証技術で競争⼒強化

価値構成4割

航空機の価値構成は主に「機体」「エンジン」「装備品」に⼤別され、航空⽤電⼦機器(アビオニクス)や着陸脚などの「装備品」は全体の約4割にものぼる。その⼀⽅で、我が国のこの分野におけるシェアは⼤きくなく、世界的に存在感を⽰す⾃動⾞や家電などとは対照的である。その最⼤の原因は航空機開発に特有な「認証⼿続き」であり、特に新規参⼊を目指す企業にとって⾼いハードルとなっている。

航空機の認証では、開発プロセス全てにおいてその安全性を⾃ら証明することが求められる。そのためには客観的でトレース可能な、複雑で膨⼤な⽂書を作成しなければならない。これをサポートするためのガイドラインが発⾏されてはいるものの、実際には⼗分な経験と知識が必要となる。

⽂書・知⾒蓄積

上述の⽂書や知⾒は先⾏メーカーにとっては貴重な財産であるため、競合他社との共有は難しい。そこでJAXAは、多くの⾶⾏実証プロジェクトなどで構築してきた航法アルゴリズムをベースに、メーカーと共同で航法装置を開発し、認証を目指す活動を開始した。

メーカーが実際に製品としての認証を取得することにより、その過程で必要となる⽂書や知⾒を蓄積する。JAXA側の知財やここで得られるノウハウは、今後の製品開発や認証の⼿助けに資する共通基盤技術として整備される。現在、2021年度内の認証取得に向け、設計、機器開発および審査対応を進めている。

コンソーシアム

この取り組みと並⾏し、そこで作成されたドキュメントテンプレート(認証特有の⽂書のひな型)や、ソフトウエアライブラリー(ソフトウエアの⼀部で他に流⽤可能なもの)などを蓄積・共有するための仕組み「航空機装備品ソフトウエア認証技術イニシアティブ」を18年4⽉に発⾜させた。これまでに会員などを対象とした各種教育プログラム(セミナーなど)や、海外の認証機関・規格団体(RTCA、SAE、GAMAなど)との意⾒交換を先⾏メーカーの協⼒のもと実施してきた。

これを受け2021年4月、認証活動全般を⽀援、先導することを目的に、上述のイニシアティブは、ソフトウエアだけでなくハードウエアも含むシステム全般の認証活動や環境試験技術などにも範囲を拡⼤した、⺠間主導型のコンソーシアム「航空機装備品認証技術コンソーシアム(CerTCAS)」へ移⾏した。これにより、新規参⼊のハードルを下げるとともに、わが国装備品産業の競争⼒強化、裾野拡⼤につながるものと期待される。


※本コラムは2021年2月時点の情報となります。

2000年科学技術庁航空宇宙技術研究所(現JAXA)⼊所。02年⽶カリフォルニア州⽴⼤学ロングビーチ校客員研究員(03年まで)。20年より現職。航空機装備品認証の研究開発や外部連携に従事。博⼠(理学)。

航空技術部門 次世代航空イノベーションハブハブマネージャ
跡部 隆

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