リブレット実用化技術の研究開発

地球温暖化対策として、航空輸送業界においてもCO2排出量の削減が強く要求されています。同時に空港騒音低減規制も一層厳しくなり、より高い低騒音性能が求められるようになりました。このような状況の中で、今後の日本航空産業のシェア拡大のためには、経済性や環境性能においてより競争力を向上させる技術開発が必要です。
JAXAでは、航空技術部門で実施してきた「エコウィング技術の研究開発」の成果を引き継ぎ、航空システム研究ユニットおよび構造・複合材技術研究ユニットで実施する「革新環境航空機技術の研究開発(iGreen)」事業をスタートしました。iGreen事業は、空力関連技術として高効率環境航空機 (HELNA: High Efficiency and Low Noise Aircraft)、および構造材料関連技術としてバイオニックエアフレームより構成されています。エコウィング技術の研究開発において優位性・独自性がある技術を選定し、実機適用に向けた研究開発を行うとともに、環境性能を大幅改善する将来技術に取り組みます。

iGreen研究事業のミッション

国際競争力強化によるシェア拡大を実現するため、優位な環境性能を実現するための空力・騒音および構造技術を開発し、実用化に向けて技術検証を進めるとともに、要素・システム技術開発を進めます。

  1. 国際競争力向上に寄与 日本の独自性・優位性のある技術について実機適用を想定した研究開発を進めます。
  2. 日本の航空産業の役割転換に貢献 CO2削減、空港騒音低減の環境性能を画期的に改善する、将来航空機の鍵技術の研究開発を実施。将来的には国際共同開発において日本の航空産業が中枢的な役割に転換(ビジネスモデルの転換)できるような技術開発に取り組みます。

実用化に向けた低燃費技術

燃費削減に向けて、リブレットコーティングや層流翼設計などの摩擦抵抗を低減する技術、複合材構造の最適設計・製造による軽量化技術の実用化に向けて、飛行試験や地上試験による技術実証を進めています。

  1. ■リブレット技術 リブレットの旅客機適用を想定し、運航・運用条件を満たすリブレットの耐久性及び施工技術の開発に取り組みます。さらに、抵抗低減効果を向上するリブレット形状を開発します。
  2. ■層流翼技術 旅客機の実飛行環境において層流化を実現する翼形状を提示するとともに、層流翼の解析技術、設計技術を開発します。併せて層流翼性能を維持するため、機体表面形状の粗さ仕様及び汚染防止性能を持つ塗料の開発も行います。
  3. ■最適構造設計技術 複合材料の自動積層装置を活用し、これまでは直線的に配置していた繊維を内部荷重のかかる方向に繊維を曲線的に配置するステアリング積層最適設計技術の開発に取り組みます。

将来航空機技術

2040年代に運航開始する将来航空機を想定して、低燃費・低騒音性能を大幅に向上させる空力技術、構造技術および機体形状設計技術の研究開発を進めています。

  1. ■将来航空機設計技術 将来航空機設計技術では、エンジンから出る騒音を胴体や尾翼などで遮蔽することで空港騒音を大幅に低減させる新しい機体形状の設計技術、低燃費層流翼と低騒音性能を両立する低騒音型クルーガーフラップ、段差なく機体形状を変形させるモーフィング機構を適用した尾翼等の要素技術を研究開発します。
  2. ■将来航空機構造技術 将来航空機構造技術では、生物の骨格構造などを模倣してトポロジー最適化を用いて新しい構造様式を創出する設計技術や、製造コスト削減に向け、熱可塑複合材を用いた新しい製造技術を活用した一体成形、ファスナレス構造等の要素技術を研究・開発します。

2020年10月1日更新