次世代運航システム(DREAMS)
2030年には現在のおよそ2倍になると予想される航空輸送量に対応するため、ICAO(国際民間航空機関)は新技術による運航システム実現のためのビジョン「グローバルATM運用概念」を提示しています。日本でも国土交通省を中心に「CARATS」プログラムを立ち上げ、JAXAは「CARATS」と連携し、将来の航空交通に対応する技術確立を目指した「DREAMS(Distributed and Revolutionarily Efficient Air-traffic Management System)プロジェクト」を2012~2015年に実施しました。
DREAMSプロジェクトでは、(1)「気象情報技術」(2)「低騒音運航技術」(3)「高精度衛星航法技術」(4)「飛行軌道制御技術」(5)「防災・小型機運航技術-災害救援航空機情報共有ネットワーク(D-NET)-」の5つの技術の確立を目指しています。(1)~(4)は主に空港周辺の交通量増大に対応する技術で、高頻度な離発着を妨げている後方乱気流や低層風擾乱の予測、騒音被害を最小限にする飛行経路の調節、導き出された最適な経路での飛行を実現する制御技術や、それを支援するための高精度な衛星航法技術など多岐にわたります。(5)は、災害時に多数集まる救援航空機と対策本部間の情報共有を図り、的確な指示を出すことで無駄な待ち時間や事故の危険性を減らす技術です。
2014年度にこれらの技術は研究開発を終了しましたが、引き続きこれらの技術の国際規格団体への提案や民間企業などへの技術移転を促進するための活動を行っています。
「気象情報技術」「低騒音運航技術」「高精度衛星航法技術」「飛行軌道制御技術」イメージ
次世代運航システムDREAMS(6分07秒)
気象情報技術
後方乱気流予測による管制間隔短縮と、低層風擾乱の影響低減により、空港容量の拡大と就航率の向上を目指します。
低騒音運航技術
空港への進入経路を最適化することにより、航空交通量が増えても地上の騒音暴露を現状と同等とすることを目指します。
高精度衛星航法技術
航空機に搭載された慣性航法装置を利用して衛星航法装置の信頼性を高めることにより、衛星航法がいつでもどこでも利用可能になることを目指します。
飛行軌道制御技術
地形等の制約で計器進入ができない空港でGLS(GPSによる着陸システム)を用いた曲線進入ができるようにすることにより、これらの空港で就航率の向上を目指します。
「防災・小型機運航技術」イメージ
防災・小型機運航技術-災害救援航空機情報共有ネットワーク(D-NET)-
災害時に救援航空機と対策本部等の間で必要な情報を共有化し、最適な飛行計画を立案することにより、救援ミッション遂行時の無駄時間と救援機同士の異常接近を減らし効率性と安全性を向上することを目指します。