乱気流事故防止機体技術の実証(SafeAvio)

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2017年3月13日

飛行実証試験で乱気流検知装置の性能を確認
~同時にパイロットへの乱気流情報提供技術を世界で初めて実証~

SafeAvioプロジェクトは、2017年1月14日から2月10日までの期間、乱気流事故防止システムを実験用小型ジェット機に搭載し、晴天乱気流検知性能を確認する飛行実証試験を行いました。今回JAXAが開発した乱気流事故防止システムは、乱気流検知装置と乱気流情報提供装置などから構成されており、従来よりも軽量かつ高性能化したモデルです。

晴天乱気流とは、晴天時に発生する気流の乱れのことで、雲が存在しないため、地上あるいは機体搭載の気象レーダーでは検知することができませんでした。旅客機が気流の乱れた空域に突入すると機体は大きく動揺し、前触れなく激しい乱気流に遭遇した場合、乗客や乗員が負傷するなどの被害が発生することもあります。
今回の飛行実証試験では、気流の検知距離としては世界トップとなる17.5km(全フライト平均値)先にある気流の動きを観測することができ、システムの性能を確認できました。航空機の巡航速度にもよりますが、このことは、今まで見えなかった前方の乱気流を、約70秒前に検知できることを意味します。この時間の余裕により、パイロットは事前にシートベルトサインの点灯や乗客へのアナウンスを行うなど、突然の揺れに備えた行動を取ることが可能となり、乱気流による負傷を未然に防ぐ効果につながります。

また、パイロットに対する乱気流情報提供機能(アドバイザリ機能)の実証試験も行いました。実際に乱気流の一種であるウィンドシア※1を検知した際には、方位や遭遇までの時間などの情報をパイロットに対しタイムリーに提供することができます。今回の飛行実証試験でアドバイザリ機能のモニタリングに協力頂いたパイロットからもその効果が確認されました。着陸時に航空機がウィンドシアに遭遇すると、機体が揚力を失うことでハードランディングなどのトラブルを招くことが考えられますが、パイロットが事前にウィンドシアの存在を知ることができれば、ゴーアラウンド(着陸のやり直し)を行う判断ができるため、事故の防止に寄与することが期待されます。

JAXAは、これからも航空機の安全な運航を実現する技術の研究開発を進めていきます。

機体前方下部に乱気流検知装置が搭載されている。

乱気流検知装置。

パイロットへの情報提供画面(飛行実験中に表示された実際の画面)

※1 ウィンドシア
気流の急激な変化。

JAXA航空技術部門広報誌「FLIGHT PATH No.3」より
※2 L-TSPD
Lidar-Target Speed。速度逸脱を防ぐための速度目標値。
※3 L-PSPD
Lidar-Predictive Speed。ライダーの観測値に基づく速度予測。楕円はそれぞれ5秒後、10秒後、20秒後の速度を、縦幅は速度の変動幅を表す。