COLUMNコラム

2021.9.3

航空機の表面摩擦抵抗低減

リブレット

空気抵抗を低減させ、燃費の良い航空機を実現する技術の獲得は、航空機において普遍的な重要課題である。消費燃料削減や温室効果ガス排出抑制といった経済性や環境性に対する要求が高まる中、空気抵抗低減技術はますます重要な意味を持つ。

これからの航空機は、各抵抗成分をコントロールする周到な技術が必須になると考えられる。亜音速旅客機の巡航飛行時の空気抵抗の内、約40%を表面摩擦抵抗が占めており、最も効率良く空気抵抗を減らす方法のひとつは表面摩擦抵抗を低減させることである。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は“リブレット”と呼ばれる微細な溝構造を機体表面に適用することにより航空機の表面摩擦抵抗を低減させる技術の研究開発を行っている。

リブレットは機体表面を流れる乱流境界層において表面摩擦抵抗を低減させることが知られており、大部分が乱流境界層である航空機表面にリブレットを施工することで、抵抗を低減させ、燃料消費量を削減することができる。

高い汎用性

JAXAでは航空機用の塗料を使って直接リブレット形状に成形する製作・施工技術を開発した。現在運航中の旅客機にも使用されている一般的な航空用塗料を使っているので既存の機体にも適用できる高い汎用性のある技術である。また、より抵抗低減効果が大きいリブレット形状についても、風洞実験技術やスーパーコンピューターによる数値解析技術を駆使して研究開発を行っている。

2016-18年度には「表面摩擦抵抗低減コーティング技術の飛行実証(FINE:Flight Investigation of skiN-friction reducing Eco-coating)」研究事業を立ち上げ、これまでに研究開発してきた独自の塗装型リブレット技術をJAXA実験用航空機「飛翔(ひしょう)」に部分的に施工し、飛行環境下での耐空性および表面摩擦抵抗低減効果を確認する飛行試験を実施した。

環境にやさしく

同時に、風洞実験や数値解析とあわせ、塗装型リブレットにおいて約5%の表面摩擦抵抗が低減されることを確認している。

今後は、これまでの研究開発成果を活かし、実機適用における課題について産業界と連携して取り組む。リブレット技術の社会実装により、燃費の良い、環境にやさしい航空技術の発展に役立てる。

リブレットを機体表面に適用した航空機の飛行試験

リブレットを機体表面に適用した航空機の飛行試験

※本コラムは2021年6月時点の情報となります。

空気抵抗の低減は航空機に必要不可欠な技術です。エネルギー消費や二酸化炭素の低減が望まれている中、環境によりやさしい航空機を目指して研究開発を進めています。

航空技術部門 航空システム研究ユニット
主任研究開発員
栗田 充

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