時事(爺)問題

JAXAメールマガジン第208号(2013年10月21日発行)
中道二郎

2020年、オリンピックがまた来る。こう書くと歳が知れる。1960年頃の子供にはワクワクすることばかりだった。曲線美に満ちた高速道路、高速弾丸鉄道、日本製の旅客機、どれも構想段階であった。首都高速、新幹線、YS-11である。すべて東京オリンピックに焦点を合わせての“開業”となった。

休日、家内と都内散策をするのが好きだ。特に下町の神田、日本橋、室町あたりが好きで何度もいく。この界隈が、江戸期には経済の中心であり、多くの人で賑わっていたかと思うとこれも歳とった私はワクワクする。

オリンピックがまた来る。今朝のニュースで神宮外苑に8万人収容の新国立競技場の建て替えを巡り、有識者団体で賛否両論のシンポジウムを開催中と伝えていた。都内有数の景観のひとつを破壊するというのである。私は、日本橋が高速道路の下でひっそりとしているのが長く気になっていた。江戸/東京の発展の象徴である場所をオリンピックのためにないがしろにしてしまったのである。水路は道路への60年代の発想はよく分かる。当時、建設されたこれらのインフラは日本の高度成長を支えてきたものであることも誰もが認める。しかし、こと日本橋に関しては他に選択はなかったものかといつも思う。
おもてなしは日本の文化の重要な一面であり、世界にアピールすることは大賛成である。しかし、東京の有形の遺産を破壊してのおもてなしの心は道理に合わない。

開発中の国産旅客機「MRJ」の初飛行を期待している最中、リニア新幹線計画が発表された……あの頃とよく似ている。