力強くもデリケートな航空エンジン~たゆまぬ努力と進化~

JAXAメールマガジン第236号(2015年1月20日発行)
薄一平

こんにちは。JAXA航空本部の薄(すすき)一平です。前回の私のコラムで火山灰に苦しめられる航空機の歴史を紹介したところ、たくさんの感想や質問を頂きました。多かったこの質問、「今は安全に飛べるのか? エンジンは強くなったのか?」に、お答えします。

改めて航空本部のエンジン専門家にも聞いてみました。私の得た結論は、人工衛星を含む地球レベルで火山噴火状況の刻々の情報の共有化と分析がなされており、格段の飛行安全性の向上が図られてきたと言えます。組織的で大規模な観察、大容量・高速計算機利用で噴火予知の研究や噴煙の流れ予測精度も進歩し続けています。その成果は航空機の運航に取り入れられています。
で、エンジンは強くなったのか?……小さな工夫はありましたが、「火山灰へいちゃら」エンジンは実現していません。「三十六計逃げるに如かず」今でも最善の対策のようです。

未だに火山灰は苦手ですが、旅客機用大型ジェットエンジンはコツコツと、時には大胆に、たゆまぬ努力を続けています。軽量化が図られ、燃費、騒音、排気ガス対策も目を見張る進化を遂げています。でも「成功」はその翌日からは「当たり前のこと」に代わっていく運命で、「失敗」ばかりが記憶に残ってしまいます。大型ジェット旅客機用エンジンの研究開発においても、多くの専門家が「まさか!?」と息を飲んだ失敗が語り継がれています。またもや(私の第2報コラム[JAXAメールマガジン201号]を参照してください)イギリスが舞台です。この開発失敗で会社は事実上の倒産、その「すばらしい」エンジンに賭けていた米国の航空機製造会社も致命的な痛手を負いました。更に、実はその余波は日本にも押し寄せていました。次回に譲りたいと思います。