おうちに帰るまでが遠足です

2020年9月28日
津田 宏果

JAXAの研究員の仕事に、フライトがあります。
JAXAには2020年2月時点で、航空機(飛行機とヘリコプタ)が3機います。
調布飛行場分室には、飛行機『ドルニエ』とヘリコプタ『BK』が、名古屋拠点には飛行機『飛翔』がいます。

この3機は、決まった目的で使われるのではなく、そのつど研究員の目的に応じてフライトしています。
使いたい研究員は何名もいるので、毎年、機体とクルー(パイロット、整備士、ディスパッチャ)の取り合いになります。飛ばしたい季節もかぶりますしね(だいたいみんな秋頃に飛ばしたがる)。
フライト中、研究員は後席に乗って、欲しいデータを記録したり、パイロットのコメントを書き取ったりしています。

ドルニエの機内。この時は後席に5人が乗って、それぞれモニタを見ています。

ジェットFTB(飛翔)の機内。次の実験ケースが何番か、パイロットと後席の研究員とで確認をしながら進めていきます。

機内でプログラムをデバッグすることもあります。

スカイツリーが完成した頃。実験用ヘリコプタ(当時はMH2000)の機内から。

このとき地上でも一緒に、次のケース番号を確認しています。地上班の彼が手に持っているのが、実験ケース一覧が書かれた飛行方案と呼ばれるものです。

アラスカで飛行実験していた頃。狭い峡谷を飛んで、電波の送受信状況調査やパイロットディスプレイの評価を行っていました。日本とは異なる航空機文化に学ぶことが多くありました。

フライト中、後席の研究員の仕事がもうひとつあります。
窓外監視と言われるもので、近くに他の飛行機やヘリコプタがいないか、山あいの場所なら山が迫ってきていないか、窓の外の景色に注意することです。
管制の無線通信で、他の機体が近くを飛んでいることが分かることもありますが、眼で視認することが一番安全です。

相模湾からの帰り道。ドルニエの機内から。

実験が終わったあと、飛行場まで戻る帰り道こそが危ない、と言われます。最も気が緩むフェーズだからですね。
着陸予定の時刻が迫っていたり、お天気が下り坂になってきたりして、焦ってしまうフェーズでもあります。

多摩川を越えると調布飛行場はすぐそこです。
なので、着陸して格納庫に戻ってくるまで気を抜かないように気をつけています(それでもどうしても気が緩んでしまうんですけど)。


調布飛行場とJAXAの格納庫の間には道路が一本通っています。
私たちがフライトに出るときと帰ってきたとき、この道路を横断します。自動車の方、自転車の方、歩行者の方、みなさまにお待ちいただくことになるのですが、いつもご協力をありがとうございます。
機内からもお礼申し上げます。