可変インテーク

可変インテークはエンジンの最前方に位置する構成要素で、エンジンに入ってくる空気流を減速・圧縮し、下流側にある空気予冷器コアエンジンなどが効率よく作動できる状態にする役割を担います。極超音速旅客機は離陸からマッハ5までの広い速度領域で作動することから、インテークに要求される減速・圧縮の程度が大きく変化します。これに対応するため、可変機構によってインテークの流路形状を変更できるようになっています。

図1:可変インテーク模式図

図1は、可変インテークの模式図です。インテークは、斜めの壁を利用して衝撃波を発生させることで、超音速の空気を音速以下に減速します。しかし、発生させる衝撃波が適切でないと、高速空気のエネルギーを損失し、エンジンの効率を低下させてしまいます。可変インテークは、斜めの壁の角度を調整することで衝撃波を適切に発生させ、高エネルギー状態を保ったまま空気を減速することができます。また、図1の可変インテークには、超音速飛行時でも少しの力で壁を動かせるような工夫がされています。可動する壁を上下対称に配置することで受ける力の釣り合いを取り、可動に必要な力を大幅に低減しているのです。その結果、駆動装置が軽くなり、インテーク重量を軽減できるという利点があります。

2003年よりJAXAの超音速・極超音速風洞において、図2に示す可変インテークの性能を確認する実験を行っています。その結果、マッハ5の空気流をほぼ設計通りに減速できることを確認しました。図3は、シュリーレン法によりインテークの内部に発生する衝撃波を可視化した画像です。インテークは取り込む流量が減ると、衝撃波が高速で振動するバズと呼ばれる現象が発生します。このバズ現象の発生メカニズムを調べるため、高速カメラによる可視化や高速圧力計測を行っています。

a) 極超音速風洞用模型

b) 超音速風洞用模型
図2:可変インテーク風洞試験模型

a) 極超音速風洞

b) 超音速風洞
図3:衝撃波の可視化

これらの風洞試験の結果を踏まえ、小型実証エンジンの可変インテークを製作しました。可変インテークがマッハ5条件で作動する場合、空力加熱によって流入する空気が950℃の高温になるため、可変インテークの材料には耐熱金属が適用されています。今後は極超音速飛行環境を模擬したエンジンシステム実証実験において、可変インテークの性能を評価するとともに、エンジン推力を最大化するための制御方法を確立していく予定です。