ものもひとも大切

飛行技術研究センター
津田 宏果(つだ ひろか)

言葉の端々に現れるひとやものに対する優しい考え方が印象的な津田さん。お休みの日には、大好きな実験用ヘリコプタを追いかけて全国を旅する行動派の一面も。

いろんなことに興味あり

両親の影響が大きいと思うのですが、本を読んだり、何か物を作ったり、実験したりするのが好きな子どもでした。
大学進学時も「理工系・工学系」と「心理学系」の両方に興味があり、最後まで決められなくて・・・。結局、両方学べる「教養学部」に進んで技術科を専攻しました。技術科には「木工・金工」「電気」「栽培」「情報」の四分野があったのですが、私は情報の分野で制御の勉強をしていました。そこで、卒業研究としてロボット制御を扱い、ロボットに興味を持ちました。ロボットと言ってもいわゆる産業用ロボットではなく、空中を飛ぶ魚型のロボットなど、なんとなくかわいらしいロボットを使って様々な動きの研究をしていたのですが、やっていくうちにもっと別の動きもさせてみたい、自由自在に動かしたい、という欲が出てきました。当時の指導教授の勧めもあり、大学院へ進学してもっと専門的にロボットの研究をしたいと考えるようになりました。そこで、積極的に文系出身者の受け入れを行っている大学院を探し、そちらへ進学しました。
大学院では、「ひとと共存するロボット」を研究テーマにしていました。ひとに拒絶感を抱かせない機械(ロボット)って何だろう、ひとが恐怖を感じない機械(ロボット)の動き方ってどの様な動きなんだろう、ということを日々考え、研究していました。
JAXAへの就職を希望したのも、「宇宙ロボット」の分野があったからです。結果的には、航空機のパイロットにとって理解しやすいコックピット表示技術の研究開発を行っている部署への配属となったのですが、もともと興味のあった心理学の要素の強い研究分野ということもあり、抵抗なくスッと受け入れられた気がします。

MH大好き♪

* MH

正式名称「三菱MH-2000A型」、愛称「MuPAL-ε」。JAXAが保有している実験用ヘリコプタ。
飛行試験設備「実験用航空機」

今好きなもの・・・MH*一色です。MHに限らないのですが、JAXAの航空機たちはみんな“頑張ってる”。研究者の研究のために色々と改造されて、過酷なミッションでも実験のたびに頑張っている姿に惹かれます。その中でも特にMHには惹かれます。はじめて出会ったのは私がJAXAに入社した6年前でした。当時のMHは機体や装置に不具合が多く起きて、しょっちゅう壊れてました。ですが、整備士やパイロットや研究者みんなが全力で直そうと努力し、それに応えるようにMHは飛ぶ。その風景に感動してしまって・・・。それに、MHには“大量生産ではない暖かみ”があるんです。
MHは実験のために全国を飛びまわっているのですけれど、自分の担当ではない実験が休日を挟んで行われる時には、その休日を利用してMHに会いに行くこともあります。もともと旅行は好きで、休日は旅に出ていることが多いんですよね。気が向いた時にフラッと出かけられるので、主に国内を旅しています。移動している間が好きなんでしょうね。窓から流れる風景を眺めたりとか。

大切にする

技術者というものは、自分の使う道具や、一緒に実験を進める相手を大事にしなければいけない。それは、父親や学部の先生に良く言われました。例えばセンサーであれば、そのひとつひとつを大事にしてあげなければ自分の仕事ができない、ということを教えられました。そのおかげで、ものを大事にしよう、というのはずっとあります。ある意味自分の仕事相手、パートナーであるのだから、一緒に実験を進める相手(ひと)と同様に大事にしなきゃと思うんです。
ひとも本当に大切ですよね。ひととの出会いには本当に恵まれているな、と思います。進路を指導してくれた先生、就職先についてアドバイスをくれた方などにはとても感謝しています。社会人になってからも、メーカーで働く方と一緒にお仕事することで、一般企業についても色々とお話を伺うことで勉強になっています。
もうひとつ、仕事をするうえで心がけていることは、“自分の知らない世界の話が来た時に否定はしない”ということです。それは違うんじゃないか・・・と感じても、主張するひとがいるということをまず受け止め、その主張について考えます。その結果、自分では気付けなかった部分が見えてくる。それは試験後のパイロットから意見を聞きだすという作業を通じて上司から学びました。前に行った同様の試験でパイロットはこう言っていたから今回もきっとこう言うだろう、という思い込みは危険です。まずは思考を真っ白にして臨まなければいけない。似ているようでも、状況や機体が違うことでパイロットから得られる情報も変わってくる可能性がありますから。