ボナンザは既にメリルフィールド空港を離れ、アンカレッジ国際空港のそばにある整備工場に移っている。ここで日本への輸送に向けて分解作業が行なわれる。
ボナンザを日本へ連れてくると聞いたとき、てっきりアラスカから日本まで飛んでくるものと思ったのだが、実際は船で運ばれるそうだ。機体を分解し梱包し、コンテナにつめて海上輸送するのだという。当然、日本に到着した後に機体は組み立て直される。
工場のなかに入ってみると、
ボナンザがいた。いや、確かにボナンザだが、何かが違う。色と鼻先は以前と同じだが...
翼がない。まるで○○のようだ。
左右の主翼が取り外されている。よく見ると尾翼もない。主翼の接合部には、警告の赤色リボンが貼ってあった。
航空機の世界では、この赤色の警告はよく使われ目にすることも多い。特に多いのは"吹き流し(英語ではSafety Flag)"と呼ばれる長方形のヒラヒラしたもので、エンジンの吸気口やピトー管の保護カバーなどに付いている。吹き流しに書かれている文は殆どの場合、REMOVE BEFORE FLIGHT。飛ばない間、風雨、埃や虫などが入り込むのを防ぐために被せるカバーだが、カバーをかけたまま飛んでは大変なことになる。そこで「飛ぶ前には(このカバーを)必ず外せ」という警告の文が書かれているわけである。
それはさておきボナンザだが、ボナンザのそれに書かれた文字はREMOVE BEFORE FLIGHTとは少し違っているようである。近付いてよく見てみよう。
PUT WING ON BEFORE FLIGHT。直訳すると「飛ぶ前には必ず翼を付けろ」だろうか。
なるほど、確かにその通りである。翼を付けずに飛んだら大変なことになる。取材記者が押しかけるかもしれない。おそらく世界的大ニュースになるだろう。ただし、飛べればの話であるが。
肝心の翼はどうなったかと周囲を見回すと、あった。
こんな向きの翼を見るのは初めてである。こうして見ると主翼の大きさを実感させられる。写真右端に整備士が写っているが、それと比べてもやはり大きい。翼たちもこの後しっかりと梱包されるそうだ。
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