空から宙へ、物づくりから街づくりへ(後編)

2022年3月28日
飯島朋子

最近、自分の専門があやふやになってきたなと思っていた今日この頃。
でも今まで技術と技術を繋げ、多角的な視点を研究開発に反映させてきたのは間違いない。
自身の専門であるパイロットインターフェース設計は、人と機械を繋ぐばかりではない。技術と技術を繋いできたのかもしれない。

例えば、気象庁と共同開発した空港低層風情報ALWIN(Airport Low-level Wind INformation)(1)
どんなに素晴らしい風観測センサーが開発されたとしても、パイロットにとっての有益な情報にならなければ使いようがない。データをいかに、パイロットに有益かつ、旅客機のシステムで簡単に生成可能な情報にするかが実用化の可否を分けた(2), (3)
パイロットと気象の視点を繋ぎ、研究開発に反映させたのだ。

その後、メーカーと共同開発したドップラーソーダを使った空港低層風情報システムSOLWIN(Sodar-based Low-level Wind INformation)(4)はどうだろう?
研究者・センサーメーカ・エアライン・新事業促進部・県等、それぞれの特技や持ち味を活かして「SOLWIN実用化」という舞台を完成させた。

SOLWINが死の谷から救われた時、多様な分野の人々が一丸となってチーム力を発揮できた成果であると実感した(5)〜(7)
独りの力はたかが知れている。それならば、多様な分野の人々を繋げ、成果の最大化を狙うインターフェースの役割も果たせたらと思った。

図1 空港低層風情報システムSOLWIN(Sodar-based Low-level Wind INformation)(4)


例えば、電気飛行機のパイロットインターフェース(8)
飛行機がエンジンから電動に変わることによって、パイロットが認識するエネルギーの情報が変わる。故障が起こった時にすぐに対処するために、ヒューマンエラーを防止する設計を試みた。
電気とパイロットの視点を繋ぎ、有人飛行に足るシステムとして研究開発に反映させたのだ。

図2 JAXA電気飛行機、
電気飛行機のパイロットインターフェース(コックピット)開発


最近、着手した空飛ぶクルマの運航はどうだろう?
まだない市場だから、JAXAとしての技術をいかに入れてくかのシーズ思考だけでは足りないはずだ。

空飛ぶクルマによる街づくり・市場性・事業性を視野に入れないと、実用化に足る技術開発に繋がっていかない。
そのために、ECLAIR(航空機電動化コンソーシアム)(9)では空飛ぶクルマを検討するチームができ、ビジネス・市場調査チームe.g.(10)、機体技術チーム、インフラチームの3つに分かれて検討が進んだ。
その成果は、空の移動革命に向けた官民協議会(11)、空の移動革命社会実装大阪ラウンドテーブル(12)など、産官学で空飛ぶクルマについて議論する場や、今後のJAXAでの研究開発に生き始めている。

技術と技術だけではない。これからは、暮らしと技術を繋いでいきたい。
パイロットインターフェース設計から、ユニバーサルインターフェース設計へ。

専門も新陳代謝して、どんどん変わっていけば良いのだ!!

そんな気付きを、今日のトークイベントは私にプレゼントしてくれたようだった。
何だ~。聴衆の方のためではなく、私のためのトークイベントだったとか!?

あっ!「ユニバーサルインターフェース」という言葉はこのコラムで考えつきました。
ユニバーサルインターフェース設計が専門です!なんて宣言するのはおこがましい限りですが、自分の目指す路が見えてきたのかもしれない。

物づくり 発想転換 街づくり 空の技術も 変革の時

そして、趣味の短歌は技術や情景をお伝えするインターフェースの役割を果たしていきたい。空の、いや宇宙の、そして技術の松尾芭蕉を目指して。

感性と 文化の価値の 向上を 目指してこその 技術開発

な~んてね。


  1. 羽田空港及び成田空港における「空港低層風情報(ALWIN)」の実運用開始について
  2. 飯島朋子, 逆転の発想(前編)
  3. 飯島朋子, 逆転の発想(後編)
  4. 鳥取空港における「低層風情報提供システム(SOLWIN)」の運用開始について
  5. 飯島朋子, 死の谷から救う人々(前編)
  6. 飯島朋子, 死の谷から救う人々(後編)
  7. 飯島朋子, 死の谷から救う人々(仕掛け人編)
  8. 飯島朋子、小林宙、田頭剛、西沢啓、電動航空機用パイロットインターフェースの開発
  9. 航空機電動化(ECLAIR)コンソーシアム
  10. 中野冠、空飛ぶクルマのビジネスモデルについて
  11. 空の移動革命に向けた官民協議会
  12. 空の移動革命社会実装大阪ラウンドテーブル