宇宙航空研究開発機構

GBT評価フライト途中棄権・警告灯点灯 CAPSTONE@アラスカ

上も雲、下も雲。雲に囲まれています。今日は幸いにして雨はやみました。ディリンガムへの移動は今日が最後のチャンスです。しかし、残念ながら目的地までの経路の天候がおもわしくありません。最初はアンカレッジ南西にあるレイク・クラーク・パス(ディスプレイ評価フライトの実験場所ともなった、あの渓谷です)を経由してディリンガムへ移動しようと計画していたのですが、ライブカメラでチェックしてみると、谷底まで雲で覆われていて通ることは出来そうにありません。一方、アンカレッジの北西方面はどうも天気が安定しているようなので、こちらから行ってみることになりました。

しかし実際にフライトしてみると、こちらもあまり天気がいいとは言えませんでした。雲、そして雲です。
JAXAの実証機は研究用の機体なので、フライトに関して様々な制限が付いています。なかでも特に大きな制限が、有視界飛行しか許可されていないことです。そのため、実証機は飛行中に雲の中に入ることができません。しかし周りは雲でいっぱいです。こんな時は雲を避けつつ、遠くまで見渡せるところを探しながら飛行することになります。

最初は600m程の高さで飛んでいたのですが、行く手を雲に遮られてしまいました。そこで高度を変えながら雲の隙間を探して飛行していたのですが、いつの間にか3000m程にまで上昇していました。この高度になるとさすがにかなり寒くなってきて、外の気温はマイナス25℃くらいにまで下がっていました。パイロット席はともかく、後席はヒータを入れてもあまり暖かくならないので、計測員はじっと寒さに耐えていました。

この高度まで上がってもまだ雲が厚く行く手を遮っていて、なかなか見通しがききません。しかも、すぐ上を航空路が通っています。航空路とは計器飛行の航空機のために設定されている空の道のことで、当然ながら計器飛行の機体が飛んでいる可能性があります。視程の悪い状況でこれ以上高度を上げることできません。このまま進むことは危険であると判断し、メリルフィールド空港に引き返すことになりました。フライトの中止は残念ではありますが、安全には代えられません。

メリルフィールドに近づくにつれて雲はなくなり、視界が開けてきました。そして機内の気温も上昇し、なんとなくほっとした空気が機内に漂っていました。アンカレッジのダウンタウンが目前に広がり、後数分でメリルフィールドに到着するというとき、計器パネルに1つの警告灯が点灯しました。電源系統の電圧が下がっていることを示す警告灯で、機体に搭載されている発電機が故障したようです。仮に電力の供給が途絶えてしまうと、計測装置が動かなくなるだけでなく飛行に必要な無線装置も動きませんし、降着装置 (ランディング・ギア)も手動で降ろさなければならなくなります。実際にはバッテリや予備の発電機から電力を供給することができるので、そこまでの状況に陥ることはありませんが、なるだけ速やかに着陸することが望まれます。そこで管制塔に連絡して着陸の優先権をもらい、すぐに着陸することになりました。空港のすぐ近くまで来ていたこともあり、特段の障害もなくいつも通りに着陸することが出来ました。

輸出のための整備作業が既に始まっています。このフライトをもって、実証機のアラスカでのフライトは終了です。
このあと実証機は輸出のための整備後、分解・梱包され、貨物船で日本に輸送されます。
日本到着後、再組立され、必要な整備をした後に日本の空を飛ぶ予定です。

飛行番号:FLT35
飛行時間:11:25-13:00 (1+35)
飛行空域:Merrill Field Airport-McGrath

カレンダー

2006年10月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

アーカイブ