宇宙航空研究開発機構

MuPAL-εによるD-NET飛行デモ@大樹町&科学未来館

大樹町での5種類の飛行試験(9月22日実験用航空機レポート参照)の2番目は、災害救援航空機情報共有ネットワーク(D-NET)の飛行デモです。
大規模災害が発生した場合の救援活動には、ヘリコプタが重要な役割を果たします。特に大地震の発生直後は道路が寸断され、地上の交通手段が使えないため、ヘリコプタは被災情報の収集、食料品・医薬品等の支援物資の輸送、傷病者や医師の搬送、住民の避難等、様々な目的に活用されます。また、消防・防災、自衛隊、警察、海上保安庁などの多機関、多数のヘリコプタが救援活動を行います。2004年10月に発生した新潟中越地震では、70機を越えるヘリコプタが現地で飛行しました。

JAXAでは、このような状況に対応して、航空機と地上の災害対策本部の間でデータリンクを用いて情報をリアルタイムに共有することにより、救援活動の安全かつ効率的な実施を支援するシステムの研究開発を進めています。D-NETと呼ばれるこのシステムでは、航空機から位置、高度、速度等の飛行情報を送信し、また地上では災害の発生状況、各航空機が搭載している装備品(重傷患者を搬送できる医療システムや映像を伝送できるシステム)等の情報を登録することにより、どのミッションにどの機関のどの機体を割り当てるのがもっとも効果的かを迅速かつ的確に判断することが可能になります。

10月11日は、JAXAの公開研究発表会が東京都江東区にある日本科学未来館で開催され、この会場でD-NETの発表を行いました。大樹町で飛行しているMuPAL-εから、データリンクによって飛行情報を送信し、東京の会場でリアルタイムで災害救援活動の判断支援を模擬したデモンストレーションを行いました。

MuPAL-εには、2種類のデータリンク装置が搭載されています。(1)地上波による放送型(多数の相手と同時に情報の送受信を行う)の装置と、(2)イリジウム通信衛星を使用する装置(8月4日の実験用航空機レポート参照)です。(1)の装置は、「3次元適応型経路を用いた次世代運航システムNOCTARN」用に開発されたものです。航空機と地上局、および航空機同士で高速な通信を行うことが可能なため、機体の位置だけではなく予定される飛行経路や風向・風速等の気象情報も共有することによって、航空機同士の安全な間隔を確保して効率良い運航を実現するシステムが構築できます。一方、(2)の装置は衛星を利用するため、一対一の通信に限定される、通信速度が遅い、などの制約がありますが、どんなに離れた場所でも直接通信を行えることが最大の特長です。D- NETは両方のデータリンク装置に対応していますが、今回のデモでは(2)の装置を使用し、大樹町で飛行するヘリからの情報を東京の会場で直接受信しました。



D-NETで開発中の運航管理システムの画面。
各機体の位置や装備品等の情報、および被災地での傷病者の発生状況と周辺の病院の収容能力等の情報を一元的に管理できます。


大樹町で飛行中のMuPAL-ε。
飛行の様子はウェブカメラでインターネット経由で東京の会場に流されました。


東京の会場では多くの来場者にお集まり頂きました。


会場ではD-NET運航管理システムの画面(左)と大樹町のライブ映像(右)を表示しながらデモを行いました。

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