津島 夏輝

航空環境適合イノベーションハブ
専門:空力弾性、構造・複合材料、積層造形、多機能・高機能構造
- 研究開発員、JAXA、2018年 – 現在
- 特任准教授、東京大学、2020年 – 現在(兼務)
- 特任研究員 (JAXA招聘職員)、東京大学、2017年 - 2018年
- Ph.D. in Aerospace Engineering and Mechanics, The University of Alabama, 2013年 - 2017年
O Graduate Research Assistant worked for a project with NASA Kennedy Space Center
- M.S. in Aerospace Engineering and Mechanics, The University of Alabama, 2015年
- Application Engineer, Volvo Group Trucks Technology (UD Trucks), Volvo Group Powertrain Engineering, Control systems, 2011年 – 2013年
- 理工学部機械工学科、上智大学、2007年 - 2011年

研究者として経験や素養を活かして連携し合える環境

― 現在の研究内容について教えてください。

最近は、3Dプリント造形技術を応用した革新構造・材料に関する研究を行っています。現代社会を支える多様な機械・構造は、更なる社会発展のための様々な高性能・高機能化により実現されています。そうした構造を構成する従来の高性能・機能材料は、優れた特性を持つ金属合金や複合材等の材料開発により作り出されています。こうした材料は、自然界に存在する種々の元素の添加・合成や複数材料を一体的に組み合わせることで、目標となる材料特性を実現することが可能となります。一方で、最近の3Dプリント技術の発展に伴い、そうした材料・構造とは全く異なる思想に基づいて、自然界に存在する材料の性質に囚われない物質を作り出すことが可能となってきています。これらは「メタマテリアル」とも呼ばれたりする最新人工材料ですが、材料のミクロな構造を複雑に制御することで、狙った変形の仕方や振動・光・熱などの伝わり方を実現することができます。そうした複雑なミクロ構造を設計し、3Dプリントにより製作・実現していく研究です。
メタマテリアルを、実際の航空構造に応用することで、これまでは実現不可能であったような機能や性能により、今までとは異なる飛び方や機体設計、安全性や信頼性の向上にもつながります。

― JAXA航空技術部門を目指したきっかけ、理由を教えてください。

前職では自動車のエンジン・車両制御の研究・開発を行っており、その後、米国で所属していた博士課程では、空気力学と弾性学の相互作用(空力弾性)に基づく構造設計を中心に、様々な分野を横断して幅広く研究を行っていました。航空機分野に限らず、NASAとの宇宙機構造に関する共同研究や風力タービンなどいろいろな分野の構造・材料研究に取り組んでいましたが、今後も、自分の専門性を活かして研究をしたいという思いがありました。そうした中で、なかなか空力弾性を専門として研究ができる環境(研究チームや研究室)が少ない日本において、唯一ともいえる空力弾性研究チームがあるということで、興味を持ちました。そして、実際に航空技術部門の方々と空力弾性研究に関してお話をする機会をいただき、一緒に研究をしてみたいと思いました。

― 今後の目標を教えてください。

これまでの経歴から航空分野に限らず、宇宙構造や自動車、それ以外の分野にも研究開発経験があります。今後は、そうした分野も含めて、自分の経験や素養を生かして広く社会に役立つ・価値を生み出す「モノ」を作り出すことに繋がるような研究をしていきたいと考えています。何年・何十年か先にふと振り返った時に、あれは自分の研究成果が応用されているんだよと、学生や子供たちに言えるような研究が出来たらいいなと思います。
そのためには組織や国の枠に囚われず、海外の機関も含めて、民間企業や研究機関、大学とも積極的に連携しながら、これまでなかったような「面白い構造・材料」を生み出せるよう、自分の能力・知見を活かしていきたいです。

― JAXA航空技術部門を目指す後輩にメッセージをお願いします

JAXA航空技術部門は、充実した研究・実験設備を多数保有しており、若いうちから「大きな研究」にも取り組むことができます。また、研究とプライベートのバランスも取りやすいですし、仕事の仕方も比較的自分でコントロールできます。そうした研究環境は魅力の一つだと思います。
それから、国を代表する航空宇宙研究機関の研究者として、様々な国際的な学会などの研究活動の場に参加することになるため、やりがいや誇りを持った研究活動ができると思います。航空技術部門は、航空分野のみならず、様々な専門性を持った方々が連携して研究をしている環境ですので、プロフェッショナルな意識と自身のバックグラウンドをうまく活用するセンスがあれば、活躍していけると思います。


地元自慢

私は、種子島で生まれ、相模原で育ち、筑波での研修を経て、調布にやってまいりました。私の人生において、JAXAゆかりの地を転々としておりますが、今回自慢したい”地元”はそのどれでもなく、米国アラバマ州タスカルーサです。前職を退職した後に博士課程取得のために渡米をして過ごした土地ですが、ここの州立大学であるアラバマ大学は、全米で最もアメリカンフットボールが強い大学の一つです。毎年アメフトシーズンになると街をあげての一大イベントとなり、アメリカで毎年視聴率40%を超えて全米が釘付けになるNFLスーパーボウルにも引けをとらない圧倒的な迫力の試合を自分たちのスタジアムで観戦することができます。Roll Tide.

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