若い世代に夢や希望を与え、一生を掛けられるような研究課題の創出を目指す
― 現在の研究内容について教えてください。
層流翼外板製造技術の研究を行っています。層流翼は、翼形状の最適設計により機体表面に発達する境界層の乱流遷移を抑制する層流化技術です。これにより翼面上の層流領域を拡大化させることで抵抗低減による燃費向上を目指しています。これまで層流翼設計は機体表面が平滑な理想条件で研究が進められてきたのですが、実際には製造上の誤差や塗装の塗りむら、経年劣化など様々な要因で機体表面に凹凸(粗さ)が生じてしまいます。実際の機体での飛行条件において、粗さはマイクロスケールほどでも乱流遷移に影響を及ぼすことが知られており、表面粗さにより早期に乱流化してしまい設計の効果を最大限に活かせないことが懸念されています。そのため、数値計算と風洞試験により乱流遷移に影響を及ぼさない機体製造における表面粗さの要求値を確立して、自然層流翼の実現を目指しています。
― JAXA航空技術部門を目指したきっかけ、理由を教えてください。
学生時代は流体工学を専攻して、流れの中に現れる物理現象に関する研究を行っていました。この研究に対して、博士課程で満足する結果を得られ、個人的にはやり切った感がありました。そのため、専門分野は維持しつつも、異なる分野や実社会に近い工学系の研究機関の就職を考えました。その中でJAXAを選択したのは就職活動を行っていく中で、専門分野の研究のみにとらわれるのではなく、広範囲の業務に携われることを面接官との対話で知ったことが決め手です。面接で研究内容や将来行いたいことをお話しする中で、あなたの研究はJAXAでここにも活かせる、研究だけではなくプロジェクトマネージメントや企画推進、広報などにも向いているのではないか、と自分自身が考えていなかった意見をいただき、JAXAなら様々な経験ができ、飽きることなく楽しく仕事ができそうだと思ったのがきっかけです。
― 今後の目標を教えてください。
まずは現在の研究課題である表面粗さ要求値を確立し、自然層流翼など、研究ベースで考えられていたことが社会実装できるようにしたいです。また、JAXAが実施する研究開発によって、より若い世代、特に子供たちに夢や希望を与えることが出来ればと考えています。そのためには、より大きなインパクトを与える成果を生み出す必要があるので、社会に本当に必要なものは何か、航空技術部門として、一研究者としてできることは何かを常に模索することで、一生を掛けられるような研究課題を創出することが大きな目標です。ただ、個人的な憧れとしては、スペースシャトルや以前にJAXAでも研究開発が行われていたHOPEのような再使用型宇宙往還機を実現させたいです。現在は国内でも様々なベンチャー企業が取り組んでおり、その成果にとても期待しますし、私自身もいつかは関われたらよいなと思っています。
― JAXA航空技術部門を目指す後輩にメッセージをお願いします
研究課題創出を目標としたように、まずは今後やりたいことや好きなことを見つけることが最も重要なことと私は考えています。その先にJAXA、航空技術部門という選択肢があるとよいなと思います。そのため、まずはとにかく興味があることに突き進んでほしいです。ただし、苦手なことにも一度は取り組んでほしいです。もしかすると思いもよらない面白さや美しさが広がっている可能性もあります。
JAXAには経験豊富な様々な専門分野を有する先輩職員が多く在籍しており、上下関係なく議論ができる場があります。また、シミュレーションによる解析、風洞試験による実験等、やるべきこと、やりたいことを実現可能な研究環境があります。このようなひと・もの二つがそろう環境がJAXAの魅力だと感じています。多種多様な背景の知識と視点が大切なため、どんな分野に限らず何か一つでも極めてJAXAで活躍してほしいと思います。

私は新潟県長岡市の出身で、お米、米菓、日本酒が有名です。秋に見られる黄金色に輝く稲穂はとても綺麗で、自然豊かな市です。また、学問・芸術の教育による人材育成を目的とした米百俵精神の教えが根付く市でもあります。特に有名なものは日本三大花火大会の一つとして知られる長岡花火です。長岡花火は他の競技大会とは異なり、長岡空襲の慰霊・復興祭を起源としています。現在でも三尺玉の打ち上げ前には空襲のサイレンの音が鳴り響きます。中越・中越沖地震と二度の大きな災害を経験した市でもあり、震災後に不死鳥のようによみがえれという意味が込められた復興祈願花火フェニックスは全長2kmにも及ぶ距離で打ち上げられ圧巻です。
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