松野 賀宣

航空安全イノベーションハブ 研究開発員
2015年3月東京大学大学院工学系研究科博士課程修了、日本学術振興会特別研究員PDを経て、2016年4月宇宙航空研究開発機構入社。大学では、不確定性下での最適制御の研究に従事。入社後、航空機運航技術の研究に従事。

自分の研究の価値を常に考え、社会に貢献できる成果を目指す

― 現在の研究内容について教えてください。

航空機の運航(飛び方)を改善することにより、環境負荷の低減を目指しています。世界的なコロナ禍により航空交通需要は大幅な減少が見られますが、中長期的には拡大が予測されており、管制官やパイロットの業務負荷の増大、遅延の発生による利便性の低下等、様々な問題が顕在化しています。そこで、空域容量拡大のための航空交通流管理として、4D運航(航空機が特定地点を指定時刻に通過する運航)による高度な時間管理の導入が検討されています。4D 運航を実行する機上技術として、FMS(Flight Management System)のRTA(Required Time of Arrival)機能(特定地点を指定時刻に通過するための速度調整機能)が存在しますが、時間制約を満たすために加減速が高頻度化する可能性があり、燃費の悪化が懸念されます。そこで、時間管理と低燃費を両立する運航を実現するため、気象情報を活用して最適な飛行プロファイルを機上でパイロットに提示する運航判断支援システムの研究開発を進めています。近年、コックピット内に持込可能なタブレット端末であるポータブルEFB(Electronic Flight Bag)の利用が普及していることから、EFB により運航判断支援を行うことを考えています。

― JAXA航空技術部門を目指したきっかけ、理由を教えてください。

子供の頃から飛行機やロケットに興味があり、大学で航空宇宙工学を専攻しました。大学、大学院と共同研究や学会を通じてJAXAの研究者の方々と出会い、研究者として活力のある姿が印象的で、私もここで働きたいと思いました。また、JAXAでは実験用航空機を所有しており、自分の研究を数値シミュレーションだけでなく飛行実証まで実施することができ、充実した環境であると思い目指しました。

― 今後の目標を教えてください。

従来の航空機に加え、無人機、空飛ぶクルマ、超音速機、宇宙往還機等、様々な機体が安全に、自由に、効率的に同じ空間を飛ぶことができる運航技術を実現したいです。これまで研究を進めていく中で、そもそも何のために研究をしていたのかと、立ち止まることもありますが、自分の研究の価値を常に考え、最終的に世の中に貢献できる成果を出したいと思っています。

― JAXA航空技術部門を目指す後輩にメッセージをお願いします

航空技術は、空力や材料、制御、推進等、幅広い分野が関わり合い、一つに統合されて形になっています。ただ、現在の航空技術が確立された完成形というわけではなく、今まで接点の無かった分野と連携することで、分野を超えた新たな発見や技術革新がまだまだあるはずです。航空宇宙工学を専攻していることが必ずしも必要ではなく、少しでも興味があれば、航空技術分野で新しいことに挑戦し活躍できる場があると思います。


jaxa自慢

JAXAはワークライフバランスをとりやすく、働き方の自由度も高いと思います。また、比較的自由に研究ができ、何か新しい提案があれば、挑戦させてもらえる環境だと思います。一方で、研究課題を模索し、どのように成果を形にしていくのか、主体性が求められる環境でもありますが、このような環境は、研究者としてのやりがいに繋がると感じています。

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