宇宙航空研究開発機構

MuPAL-ε シュードライト実験 その1@大樹

LIFLEX予備試験が終了した後、息つく暇も無く次の実験が始まりました。今回の大樹町シリーズ5つ目にして最後の、「疑似準天頂衛星飛行実験」です。

この実験は、今年1月の飛行実験に引き続いて行う測位システムの実験です(1月26日実験用航空機レポート参照)。測位システムと言えば米国のGPSが広く世界中で使われていますが、日本も準天頂衛星という人工衛星から測位信号を送信することを計画しています。準天頂衛星は、GPSより精度を上げるために、改良された測位信号を送信することになっています。
今回の実験では改良された測位信号の送信機(シュードライト=擬似衛星)をヘリコプタに搭載し、上空から送信することによって、準天頂衛星が運用されていると同様の状態を作って、測位システムの性能を調べることにしています。
この研究は、総務省からJAXAが委託された研究で、測位衛星技術株式会社と共同で実施しています。


送信機搭載作業中のMuPAL-εまずは、送信機をヘリコプタに搭載します。今回の飛行は、「航空法16条第3項において準用する同法11条ただし書きの規定」に基づく許可を受けて行います。これは、一時的に実験機器を搭載する場合等に用いられる手続きです。一時的な搭載とは言え、機器を搭載した後は、地上でエンジンを運転して全ての機器の電源を入れ、機体の装備品が電気的に有害な干渉を受けないことを確認します。どんな実験でも、まずは安全の確保が第一です。

整備士が送信機をがっちりと固定します第一回目のフライトを27日15時5分から行いました。このフライトでは、地上での測位信号の受信レベルが適正になるような飛行高度を確認しました。今日の結果を反映して、明日から本格的な実験を行う予定です。

この実験はヘリコプタを人工衛星に見立てたものなので、約1時間の飛行中、ほとんどの時間は空中に静止するホバリング飛行を行います。ホバリングは一見単純な飛行のようですが、前進速度がある飛行に比べて、高い集中力を要求される難しい飛行です。
さらに今回は、衛星の模擬を行うために500m以上の高い高度でホバリングすることを求められています。高度が高いと地上の目標物が見えないため、ホバリング位置を保つのは一層難しい作業になります。そこで、ついこの間実験した(10月18日実験用航空機レポート参照)ホバリングディスプレイを早速利用することになりました。ホバリングディスプレイを使うことによって、難しい実験飛行も行うことができます。計測機材を常設しているMuPAL-εの得意技の一つと言えるでしょう。


ホバリングディスプレイを見つめるパイロット。集中力が高まります。なお、左のシートに座ったパイロットがホバリングディスプレイを見て操縦している間は、右のシートに座ったパイロットが、周囲に他の機体が接近して来ないか監視しています。常に安全が最優先です。

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