宇宙航空研究開発機構

MuPAL-α Micro-GAIA飛行評価

この実験用航空機レポートにMuPAL-α の登場回数が比較的少ないのには、いくつか理由があるのですが(編集長の好みとか)、そのひとつに見栄えのする写真を撮りにくいという事情があります。MuPAL-αは19人乗りの小型旅客機を改造した機体なので、客室から操縦室が見えにくく、窓が小さくて外も良く見えません。

そうは言っても、5月は8回もフライトしたので、レポートすることにしました。パイロット訓練が1回、制御実験が3回、そして今回のMicro-GAIA(マイクロガイア)飛行評価が4回です。
Micro-GAIAとは、超小型GPS補強型慣性航法装置(GPS Aided Inertial Avionics)の略称です。カメラの手ブレ補正やゲームのコントローラに使われる超小型の半導体ジャイロスコープとGPSを組み合わせて、機体の位置や姿勢を計測する装置です。従来の装置に比べて小型軽量かつ低コストなのが特徴です。

Micro-GAIA(マイクロガイア)。小さくても立派な電子機器です。

今回実験する装置は、それまでの試作機の成果を反映して昨年度に作ったもので、リアルタイムで計算結果を出力できる、言ってみれば製品版です。リフティングボディ飛行実験(2006年10月23日の実験用航空機レポート参照)で使うことになっていて、"待ったなし"の状況なのですが、ジャイロとGPSのうちGPS受信機が初めて使う機種であることから、なかなか思うような結果が出なくて、設定を変えて実験を繰り返していました。

午前10:35、MuPAL-α は調布飛行場を離陸しました。

エンジンが今日も頼もしく回っています。2基で最大1430馬力を発揮します。


今回の実験では、直線飛行、連続旋回、上昇、降下といった具合に、Micro-GAIAにとって厳しい飛行パターンを組み合わせたフライトを行い、姿勢の誤差が想定範囲内に入っているかどうかを見ます。こうした実験が簡単にできるように、MuPAL-α には位置や姿勢を高精度で測る装置が標準装備されています。

連続左旋回の実験中(別の日のフライト)。実は乗っている人は、機体でなく地面が傾いているように感じます。


今回のフライトでは、MuPAL-εも同時に飛行しています。双方のパイロットが無線で交信して、旋回のタイミングを合わせます。こうした交信は航空無線バンドの中でJAXAに割り当てられている周波数を使って行います。計画した飛行パターンをこなしたら、調布飛行場へ戻ります。普通の実験では一息つける時間ですが、今回は全飛行時間について評価するため、気を抜けません。

調布への帰り道.ホンダエアポートに飛行船が2機係留されていました。


MuPAL-α は窓が小さいと書きましたが、実は秘密兵器があります。それは「バブル(泡)ウィンドウ」と呼ばれる半球形の窓で、側面から飛び出した形になっています。ここから外を見ると、普通は見えない真下や真後ろがバッチリ見えます。

この窓だけ、飛び出しています。バブルウィンドウは左右にひとつずつあります。



バブルウィンドウから飛行中の水平尾翼を見てみました。


11:55に調布飛行場に着陸。急いでデータを解析したところ、今回は所定の性能が出ていたことが分かりました。ひと安心です。この後、MuPAL-αは仙台の工場に入り、実験機器の換装工事と、耐空証明検査(年次点検、2006年8月3日のレポート参照)を行います。

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