宇宙航空研究開発機構

MuPAL-ε、GPSを用いたIFRルートの飛行試験 「IFRとは?」

IFRとは?

航空機の飛行方式は、有視界飛行方式(VFR)と計器飛行方式(IFR)に大別されます。VFRでは、パイロットが地形や他の航空機を目で見て確認し、衝突しないよう飛行します。視程(見通しのきく距離のこと)が良い時に限られますが、好きな場所を飛行できるという利点があります(実際には飛ぶことが禁止されている場所もあります)。一方、IFRでは、定められたルートに沿って、地上の管制官の指示に従って飛行します。管制官は、レーダ等で航空機の位置を確認し、航空機同士が衝突しないようにパイロットに指示を出します。IFRでは視程の制限を受けないため、雲の中を飛ぶことも許されています。(IFRについては2006年7月27日実験用航空機レポート参照)

IFR運航を行うためには、地上の目標物が見えない時でも、定められたルートに沿って正確に飛ぶ必要があります。従来は、地上に設置されている無線局からの誘導電波を使用していたため、この電波が届かない場所ではIFR運航を行うことができませんでした。が、まもなく、我が国においても、GPSの精度と信頼性を向上する衛星航法補強システム(MSAS)の運用が開始され、これによって、衛星からの電波を使ったIFR運航が可能になる予定です。衛星からの電波は、山等の障害物の影響を受けずに低高度でも受信可能なため、ルートを設定する自由度が増すことが期待されています。

ヘリコプタに適したIFR

ヘリコプタは、旅客機のように高い高度を飛ぶのは苦手です。旅客機は、どんなに高い高度を飛んでいても、客室内の気圧が下がらないようにする装置(与圧装置)や、外気温が下がっても翼等に氷が付かないようにする装置(防・除氷装置)を装備しています。ところが、ほとんどのヘリコプタはこのような装置を装備していません。そもそもヘリコプタは、近距離を短時間で移動する目的に使われることが多いため、高い高度を飛ぶと効率が悪いという事情があります。GPS を用いたIFRの実現によって、近距離を低高度で効率よく結ぶ、ヘリコプタに適したIFRルートの設定が可能になることが期待されています。
JAXAでは、今年度、関東地方に具体的なルートを想定し、IFR運航を模擬した飛行実験を計画しています。実験では、GPSとMSASを用いた時の測位精度(自機の位置を計測する精度)やプロテクションレベル(GPSの信頼性を表す指標)、ヘリコプタが定められたルートを飛ぶ精度、パイロットや管制官のワークロード(負荷)、等についてのデータを取得し、ルート設定基準の妥当性検証等を行う予定です。
今回のフライトは、このような飛行実験で使用するディスプレイの機能確認が主な目的です。ディスプレイには、GPSを用いて設定されたルートに沿って飛ぶための情報が表示されます。このような計器は母機にも装備されていますが、母機のGPS受信機はMSASに対応していないため、MSASに対応した別のGPS受信機を搭載し、そのデータを用いて母機の計器と同等の動作をする実験用計器を開発しました。


実験用に搭載されたGPS受信機。この受信機は、GPSだけではなく、運輸多目的衛星(MTSAT)を用いた衛星航法補強システム(MSAS)に対応しており、GPSの精度や信頼性を向上する機能を持っています。


実験用ディスプレイの左側には定められたルートからのズレを示す計器が表示され、右側にはマップのようなイメージでルートと現在位置が表示されます。


定められたルートからのズレを示す計器は母機にも装備されています(計器板の右席側)。今回のフライトで、実験用計器(左席側)と母機計器が同じ動作をすることを確認できました。


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