朝、実験棟に着いてみると、あたり一面真っ白です。 これは霧の一種で、海霧(かいむ)という現象です。暖かく湿った空気が海上に流れていき、そこで冷やされて、水蒸気が水粒となって発生します。ここ大樹町航空公園は海のすぐそばなので、海霧は珍しくなく、たびたび発生しては実験隊を悩ませます。
幸いなことに午前中は昨日までの試験の結果解析をすることになっていました。午後のフライトまでに霧が晴れてくれるのを待ちます。
滑走路を見渡せるはずなのですが、真っ白で何も見えません。
そして午後、地上の海霧が晴れたチャンスを狙って、フライト開始です。
これまでの試験結果から、地上にいるときの実験機のGPSの精度があまり良くないことが分かっていました。その対策として、ハンガーから離れた場所で GPS受信機を起動させてみることになりました。ハンガーは横幅30m、高さ35m、奥行き83mもある大きな建物です。これまでこのハンガーに近い場所でGPS受信機を起動させていたため、GPSの電波が建物に反射して誤差を生じていた可能性があるからです。
実験機をこれまで以上にハンガーから離します。とはいえ、ハンガーはヘリコプタが上昇していく際のパイロットにとっての目安として必要ですし、実験機の電源ケーブル長の制約もあって、あまり遠ざけることもできません。フライト終了後、今回のGPS受信状況はこれまでよりも良かったことが分かりました。改善策が見つかり、ひとまず前進です。
離陸し上空まで行ってみると、やはり海霧が残っていました。幸運にも予定していた高度は晴れていて、試験ケースを予定通り行なうことができました。
海岸線沿いに海霧が発生しています。沖合の海上は一面、海霧に覆われていました。
本番時、母機ヘリコプタには、分離操作パネル操作担当者が搭乗します。このパネル操作担当者は、母機、実験機、地上の状況をみながら、実験機の電源切り替えやパイロットへのコールをします。このフライトでは、離陸前から分離までのシナリオを本番さながらに実施し、手順や台詞に無理がないことを確認しました。
今日の午前中の解析結果と午後のフライト結果をもとに、明日以降のフライトの予定を決めることになりました。結論が出るのは明日の朝になりそうです。
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