宇宙航空研究開発機構

MuPAL-ε 月着陸レーダフィールド試験@伊豆大島 ~地上撮影班からのレポート~

伊豆大島の試験では、MuPAL-εは調布飛行場から離陸して現地上空で試験を実施し、着陸せずに調布に戻ります。現地で地上班がいないため、試験の様子を地上から撮影した映像はこれまでありませんでした。今回の試験は、BBMの最終確認ということで、その様子を記録するために撮影班が現地に送り込まれました。ここで、BBM(ブレッド・ボード・モデル)とは、新しい技術を使ったシステムを開発する際に、その技術の確立を目的として製作される試作機のことです。BBMで基本的な技術を確立した後、EM(エンジニアリング・モデル)と呼ばれる、より実際に宇宙で使われるシステムに近い仕様の試作機の開発に移行する予定です。

撮影班は調布飛行場から新中央航空(株)のドルニエ機で移動しました。普段、飛んでいる姿は間近で見ていますが、乗せていただくのは初めてです。JAXAのドルニエ機(MuPAL-α)は機内に所狭しと実験機材が積まれており、座席は最大でも6席しか取り付けられませんが、この機体には整然と19席も並んでいます。




現地に到着です。最寄りの駐車場から20~30分ほど歩いて撮影現場に向かうと、「月らしい?」光景が広がっています。途中、「もく星号遭難の地」という看板がありました。「もく星号」は昭和26年(1951年)に就航した、我が国で戦後初めての旅客機でしたが、翌27年4月9日にこの地に墜落したと記されています。




(c)JAXA
JAXAの陸域観測技術衛星「だいち(ALOS)」(https://www.jaxa.jp/projects/sat/alos/index_j.html)で撮影した大島の画像です。赤線が本日の試験で実際に飛行した経路です。まず、(1)大島空港の滑走路上空を通過、次に、(2)「裏砂漠」周辺を飛行、(3)「櫛形山の尾根を通過して三原山との間(裏砂漠の南西部)で垂直降下」、といった試験項目を実施しました。

撮影班は2名で、1人は櫛形山の頂上から、もう1人は裏砂漠から撮影しました。この他に、テレビの番組制作会社の方3名が同行されました。来年3月頃に「月探査」の特集番組が組まれ、今回の試験の映像も使われる予定とのこと。パイロットと無線で連絡をとりながら、撮影のポイントやタイミング等を案内するのも我々の役目です。

予定通りMuPAL-εが到着し、試験が始まりました。後ろに見えるのは三原山です。今回の試験では、できるだけ実際の月の地形に近い場所(植生や人工物が無い自然の地形)で、「探査機」の動きに近い飛び方をして着陸レーダの機能・性能を確認することが目的です。


櫛形山の尾根の上を通過します。これは、実際の月着陸の際にも、起伏を越えて飛行する可能性を考え、こういった地形でも着陸レーダが正常に機能することを確認するための試験です。


着陸の最終段階を模擬して「垂直降下」を行います。ヘリコプタは「垂直離着陸が得意」と思われがちですが、実際の運航では垂直に上昇したり降下したりすることはまずありません。パイロットにとっては非常に厳しい要求になります。


現地で約1時間、予定通り全ての試験を終了し、機体は調布飛行場に向けて帰投しました。

現在、MuPAL-εを使ったさまざまな実験や研究を紹介するビデオの制作を進めています。今回撮影した映像も使用する予定です。このビデオは、研究所の一般公開(毎年4月に行われ、来年は4月20日(日)の予定です)や調布飛行場祭り(毎年10月頃に行われています)等の公開イベントで上映しますので、ぜひご覧下さい。

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