宇宙航空研究開発機構

SAVERH はじめました

MuPAL-εを使った新しい研究テーマの飛行実験がはじまりました。

この研究では、ヘリコプタを使った災害救援や捜索救助を、夜間や悪天候時にも安全に実施できるようにするため、パイロットにわかりやすく飛行情報を見せる方法を開発します。島津製作所とNECとJAXAの共同研究として3年間かけて開発と実験を繰り返し、最終的には夜間に山岳地のヘリポートに着陸することを目標としています。これまでは「パイロット視覚情報支援技術の研究」とか「HMD-FLIR」(なんのことかは後で記述)とか呼ばれていましたが、本日初飛行の直前になってSAVERH(Situational Awareness Enhancer for Rescue Helicopter)というコード名が決まりました。これから3年間飛行実験を続けてゆきますので、どうぞよろしくお願いします。


センサとデータベース情報を組み合わせて「肉眼では見えない情報」を表示

さて、今回の実験では、2種類の特徴的な装置が搭載されています。
そのひとつが赤外線カメラです。FLIR(Forward Looking Infra-Red)とも呼ばれます。赤外線カメラはその名の通り人間の目に見えない赤外線を検出するもので、わずかな温度差を検知して、夜間でも表示することができます(「夜間でも」というのが最大のウリ)。昔から防衛用途や海上保安庁の機体には搭載されていましたが、最近は小型のものがビジネス機などに搭載されて夜間の離着陸に使われるようになってきました。今回MuPAL-εに搭載したのは小型で、かつ分解能の高い最新の試作品です。
MuPAL-εに搭載した赤外線カメラ

こんな映像が撮れます。格納庫から飛行場の方を見ています。

もうひとつがHMD(Helmet Mounted Display)です。HMDはバイザ部分にディスプレイを投影することで、パイロットは外の景色とディスプレイのシンボルの両方をかさねて見ることができます。これも軍用機ではずいぶん以前から使われてきた装置ですが、民間機で実用化されたことはありません。システムが複雑で高価であり、広く民間機に普及させるにはまだまだ技術的にも多くの課題があります。

HMDの外観:黒いバイザ部分に映像を投影しています

ヘルメットの中にカメラを入れて取った映像(パイロットにはこんな感じで外の景色と絵が見えるらしい)


今回、これらの機材を搭載するため、MuPAL-ε機内の機材配置を大幅に模様替えしました。パイロットに見せる表示も、まだまだ開発中なので、航空局から特別な許可を得ての飛行になります。9月1日から行う4回の飛行は、これらのシステムがちゃんと機能するかどうか、実験の手順に安全上の問題がないかどうかの確認が目的です。
というわけで、SAVERH初フライト行ってまいりました。

HDD(Head Down Display)を使って飛行中


余裕がなくて、ろくに写真もとれませんでしたが、機器のトラブルも少なく、初飛行としては予想以上に順調でした。HMDの情報を使って本格的に操縦するのはこれからです。

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