昨日、夜間飛行の後に浦安へリポートへ行っていた21MEが、再び調布へ帰ってきました。
今日はフライトの予定はなく、研究所のハンガーで実験準備作業が行なわれました。
機体が戻ってくるのを待っていた各実験の担当者が集まり、打ち合わせが始まりました。研究者、パイロット、整備士、実験機器操作員がそれぞれに意見を出し合い、最善策を探して検討が続きます。
昨日8月3日のレポートで、21MEは4月から7月にかけて耐空証明検査(年次点検)と実験機器の追加装備のために調布を離れていたと書きましたが、新たに搭載された装置について、ご紹介します
追加装備された装置とは、
(1)衛星通信装置、および(2)大気の湿度を計測する装置です。
(1)衛星通信装置は、イリジウムという通信衛星を使って、機体の飛行データ等を地上と送受信するための装置です(左図)。イリジウムは既に携帯式の電話等にも使われているように、非常に小さいアンテナと装置で通信できるのが最大の特徴で(右図)、ヘリコプタや小型飛行機への搭載にも適しています。
これまでMuPAL-εは専用の地上局との間で無線通信を行うシステムは搭載していましたが、通信距離はせいぜい数十kmでした。イリジウムは、日本中(世界中!)いつでもどこでも通信可能です。
イリジウム衛星を管制通信(飛行経路等の指示を管制官からパイロットに伝えるための通信)に使うこともICAO(国際民間航空機関、世界各国が加盟する国連の専門機関)で検討されています。
(2)大気の湿度を計測する装置(右図)の搭載により、MuPAL-εの用途が広がりました。8月7日からは、早速この装置を使って大気観測を行う飛行試験が計画されています。また、飛行システム技術開発センターでは、航空機の騒音が大気中を伝搬する際の特性を詳しく調べる飛行試験を行っていますが、このような用途にも湿度の計測が必要になります。
この他にも、母機関係の装備品にもいくつか変更箇所があります。
ELT(Emergency Locator Transmitter;航空機用救命無線機)という無線装置が変更されました。これは、航空機が遭難、墜落、不時着した場合に機体の位置を自動通報する装置です。航空法が改正され、人工衛星を介して遭難情報を送信できるような装置に変更されることが義務づけられたため、ELTのアンテナ(図5)が換装され、以前より長いものになりました。
また、パイロットの座席が変更されました(左図)。従来の座席は前後の位置を調整することができませんでしたが、新しい座席ではパイロットの体格や好みにあわせて調整できるので、より操縦しやすくなりました。
(左)新しい座席下部に、上下方向・前後方向の2つのレバーが付いています。前後方向に調節可能とするため、座席の床への固定方法も以前と変わっています。
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