昨年から始まったSAVERH。2年目の今年も、新たな課題をもって飛行実験を続けています。
昨年は、夏に調布飛行場で機能確認フライトをしたあと、秋は長野県松本空港に実験拠点を置き、山間部での飛行実験を行いました。
今年のSAVERHのテーマは、FLIR映像と合成地形表示を使った、夜間のアプローチ(滑走路への進入)と山間部の地形認識です。
そこで、夜間も運営されている空港で、近くに山や谷がある空港、12月という時期でも降雪がなく天候が安定している場所の空港、という条件のもと、空港探しを行ってきました(もちろん、JAXAの実験フライトを受け入れてくださることが大前提です)。この空港探し、日本全国の空港を対象に4月から続けてきました。
そして、候補に上がったのが和歌山県の南紀白浜空港です。
今回、場所の下見のため、兵庫県淡路島南端から紀伊半島南部にかけて飛ぶことになりました。
MuPAL-εは、2008年12月以来、三菱重工業(株)小牧南工場に入工しています。今日のフライトは、県営名古屋空港から離陸し、戻るフライトになりました。
海岸に沿って、白浜町の市街地が広がります。市街地の南東、高台になっている部分に、南紀白浜空港はあります。誘導路灯の赤い橋脚が見えます。
ここ白浜町は、観光地、別荘地でもあり、大きな建物はほとんどがホテルで、斜面には別荘が何軒も建っています。
滑走路の南側から進入していきます。
実は、この市街地と空港との位置関係も、飛行実験を行ううえで重要なポイントです。
SAVERHのように何度もアプローチを繰り返すフライトでは、騒音が起こりやすくなります。住民の方々にご迷惑とならないよう、なるべく市街地を外して飛行経路を考えなければなりません。また、夜間のFLIRの有効性を調べるうえで、市街地の灯りが明るすぎると、FLIRを使わなくても目視で滑走路が見えてしまい、実験が成立しない可能性もあります。
エプロンに降りて給油。次に来るときは、ノーズブームは外れた姿になっているでしょう。
後ろに見える白い建物はリゾートホテルのエクシブ白浜、観覧車はアドベンチャーワールドです。
そのあと、空港管理事務所を訪ね、飛行実験についてご相談をしました。
FLIRや地形表示の実験では、海岸線や尾根の稜線、つまり、海/空/山の境界線を、どれだけ明確に見分けられるか、区別できるかを試すことになります。
海岸があり、稜線が何本か走っている山がある場所を探して、陸地に沿って飛びました。
本州最南端の串本を経て、紀伊半島を巡ります。
本州最南端、串本町(写真左手前の山頂にある白い円形のものが、串本VOR)。
淡路島南側の崖も候補でしたが、南紀白浜空港からの距離がある(遠い)ということで外し、結果、空港から南東に約15NM(30km)の距離にあるすさみ町江住付近が、実験に使えそうだと分かりました。
下見を終え、機体は名古屋空港に戻りました。
調布には来週、戻ってくる予定です。
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