機体動揺低減技術の飛行実証

次世代航空イノベーションハブの活動

航空機事故の中で大きな割合を占める乱気流由来の事故を防止することで、相当数の航空機事故を防ぐことができます。
JAXAでは、「乱気流事故防止技術の実証(SafeAvio)」プロジェクト(2017年終了)において、航空機搭載型ドップラーライダー(LIDAR:LIght Detection And Ranging)を用いた晴天乱気流検知・ 情報提供システムの研究開発を行い、2016 年度までにシステムの機能・性能について飛行実証を行いました。2018年には米国ボーイング社のecoDemonstratorプログラムにおいて、晴天乱気流検知システムを大型機に搭載した飛行試験を実施し、ボーイング社から、実用化に向けた評価を得られたほか、航空機への搭載、搭載後の調整および運用に関する技術課題などの知見が得られました。

本事業では、SafeAvioプロジェクトで開発した、晴天乱気流の検知が可能な乱気流検知システムからの情報を使って、推定した気流ベクトルデータ をもとに舵面(航空機の姿勢をコントロールする動翼)を自動で制御することで、機体の揺れを低減させる機体動揺低減技術(STABLE*)を実証します。この技術により、運航の安全性を高めることが期待できます。

*System for Turbulence Alleviation By Lidar Employed controllerの略

機体動揺低減技術の概念図

事業の目的、目標

乱気流由来の航空機事故数の削減に資するため、ライダー情報に基づく動揺低減制御の飛行実証に向けた機体動揺低減技術の研究開発を進めます。
SafeAvioプロジェクトで開発した、晴天乱気流の検知が可能な「乱気流検知システム」と、その情報を利用した「機体動揺低減技術」は、乱気流事故防止に資するものであり、航空輸送の安全性向上への大きな貢献が期待できます。

主な実施項目は以下の通りです。

  • 2軸ライダー小口径化改修
  • 実験機機体モデルに合わせた突風応答軽減制御の設計および搭載計算機への実装
  • 制御評価ツール作成・解析
  • 飛行試験

外部連携活動による情報共有

航空工学の枠を超えた幅広い分野と繋がったWEATHER-Eyeコンソーシアムでの外部連携活動に参画し、研究開発進捗状況等に関して情報共有を行っています。特に、WEATHER-Eyeコンソーシアムに設置した「乱気流対策専門分科会」では、議論を通じて、ステークホルダーと最新の情報共有を図っています。

突風応答軽減制御に関する風洞試験結果(24秒)

※2019年度WEATHER-Eyeオープンフォーラムにて紹介

風洞試験概要

風洞設備を用いて開発中の制御アルゴリズムの有効性を検証

風洞設備

・JAXA LWT2 (2m×2m低速風洞)にて実施
・通風時風速: 25m/s と設定 (想定飛行条件101.4m/s相当,M=0.3, 2000FT)

  • 突風発生装置
    上流からの風を偏向させて突風を模擬
  • 半裁剛体航空機模型
    想定実機はNASA Common Research Model (CRM)の0.48倍 (Regional Jet相当のサイズ)
    模型セミスパン1.0m
  • 模型支持装置
    ピッチ・ヒーブ(上下)運動(主な解析はヒーブ固定で実施)
    五分力天秤により力・モーメント計測
  • デジタル制御ユニット(DCU)
    動翼を制御 (エレベータ,同相エルロン)
    実際のライダーは使用できないため、突風発生装置のコマンド時系列から風速情報を模擬的に取得(気流推定アルゴリズムは用いない)

乱気流遭遇時の客室内のシミュレーション結果(62秒)

左は通常の乱気流遭遇時の客室内。右は機体動揺低減技術で上下の揺れ(上下加速度)を半減できた場合の客室内。


2020年11月11日更新