2017年11月10日、東京大学武田ホールにおいて、気象影響防御技術(WEATHER-Eye)コンソーシアムが主催する「第2回WEATHER-Eyeオープンフォーラム ~空は動く、航空を守る技術を~」が開催されました。2016年に引き続き2回目の開催となる今回は、多方面から204名もの方々が参加されました。
第一部では、WEATHER-Eyeコンソーシアム、石川和敏ステアリング会議議長による開会挨拶に続き、三つの基調講演が行われました。株式会社北海道エアシステムオペレーション企画部大槻誠氏による「着氷と冬期運航における現状と課題」と題した講演では、航空機の着氷除去などの現状について映像を交えた紹介が行われました。同社が運用するターボプロップ機は、着氷が起こりやすい高度を飛行するため着氷は深刻な問題であることや、着氷除去が目視で行われていることから、小型機向けの着氷センサーがあれば便利だという話をされました。
続いて行われた全日本空輸株式会社整備センター技術部津留啓介氏の講演「航空機整備における特殊気象影響時の対応」では、着氷や噴火による火山灰、雷などの特殊気象がどのような影響を機体に与えるのかについて発表が行われました。特に機体に被雷した場合のダメージについて、金属と複合材料の例を紹介し、複合材料の修復技術への期待なども語られました。この2件の基調講演で、WEATHER-Eyeコンソーシアムが取り組む活動の重要性が改めて確認されたと言えるでしょう。第一部の最後には、コンソーシアムのステアリング議長を務めるJAXA次世代航空イノベーションハブの石川ハブマネージャよりWEATHER-Eye技術の概要と2年目を迎えたWEATHER-Eyeコンソーシアムのこれまでの活動報告が行われました。
第二部では、個別の気象に対する課題とそれに対応する研究の進捗状況について講演が行われました。首都大学東京システムデザイン科の牛尾知雄教授は、「被雷を避けるための技術」と題し、雷の発生するメカニズムや発生しやすい温度帯などを解説した後、被雷の可能性が高くなる航空機の離着陸時に雷雲を検出することが重要であり、そのためにフェースドアレイ気象レーダーなどの活用の期待について発表がありました。
続いて、「積雪によるオーバーラン事故を防ぐために」と題された講演では、北見工業大学地域未来デザイン工学科の原田康浩准教授が、北見工業大学、株式会社センテンシア、JAXAの三者が共同で研究開発を進めている埋設型の雪氷モニタリングセンサーについて、その原理や実験方法、北見工業大学におけるフィールドテストの結果などについて説明がありました。神奈川工科大学工学研究科の木村茂雄教授による「着氷予防による安全性を確保するための技術」と題した講演では、加熱や塗料など着氷防止手法の紹介や、航空機以外にも風力発電やアンテナ、風向風力計などでも着氷防止が必要であること、また、着氷防止に関し試験方法を含めて明確な基準がないことが課題であることなどの説明がありました。これら三件の取り組みは、航空分野だけでなく自動車分野や風力発電分野など、他の分野にも広く関わる内容でした。
四つ目の講演として、JAXA航空技術実証研究開発ユニットの又吉直樹技術領域主幹より、2017年4月から成田空港と羽田空港で実用化された「空港低層風情報(ALWIN)」や、地方空港での導入を目指して開発されている「SOLWIN」の開発状況、さらには、晴天時の乱気流の事前検知を目指す「SafeAvio」の飛行実証結果などについて説明が行われました。
WEATHER-Eyeコンソーシアムは、航空分野だけでなく幅広い分野の参加者による活動ですが、今回のオープンフォーラムでは多方面から昨年を上回る参加者があり、これら参加者との意見交換を通じて、コンソーシアムの活動や研究開発の加速・発展が期待されます。